2025.08.19 ICTで「個別最適な学び」追求 日体大柏高のキーマンに舞台裏を聞く
熊井教諭
日本体育大学柏高校(千葉県柏市)が、全校的にデジタルトランスフォーメ―ション(DX)を進めている。新入教員の80%がソフトウエア開発のLoiLo(ロイロ、横浜市)や米グーグルが提供するICT(情報通信技術)支援ツールの「認定教育者」となるなど、着々と成果が表れている。同校のDXを先導する熊井允人教諭に舞台裏や成功の秘訣を聞いた。
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同校でDXが動き出したのは約10年前。米アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」が導入されたのが始まりだった。当時は学校でICTを教育に生かす文化が根付いておらず、熊井氏自身もDXの必要性に疑問を抱いていた。
転機が訪れたのが、「学力向上委員会(現・教育研究部)」のメンバーとしてさまざまな教育支援ツールについて学び始めた時だった。
授業支援クラウドサービス「ロイロノート」導入校の研修で他校の教員の活用法について習得する中、「授業を発展させるためにツールを使う」という意識が芽生えていった。
自身の授業でもツールの活用で工夫を凝らし、入試だけでなく、将来に生かせる授業についても考えるようになった。熊井氏は「『YouTube』や『スタディサプリ』を生かした動画形式の授業が出てくる中、自分にしかできない授業の価値を改めて感じた」と振り返る。
新人の「ロールモデル」に
熊井氏は、新人教諭の教育体制の整備にも着手。自ら学び続ける姿勢や校外に出て勉強する姿勢を「ロールモデル」として示すと、周りの教諭に徐々に伝播していった。
具体的には、3年前から若手研修のパッケージを作り上げ、厚生労働省の「人材開発支援助成金」や文部科学省の「高等学校DX加速化推進事業」の補助金を利用して運用。ICT教育に長けた他校の教諭の話も積極的に聞き、「教員としてどう学び続けるか」について考える内容になっている。
認定取得者が大幅増
フォローアップのミーティングを1対1で行うことで、研修で得た知識を定着させることにも注力。こうした仕組みでICT支援ツールを授業や校務で効果的に活用するスキルを持つ認定教育者を増やし、若手が主体的にツールを生かす授業を進められるようにした。
「社会に開かれ、地域に密着した学校にしたい。生徒の成果より成長に喜びを感じたい」と熊井氏。そうした学びを実現する際に必要な手段がDXだ。今後もICT技術を駆使し、生徒1人1人の特性や理解度に合わせた、学校でできる「個別最適な学び」を追求していきたい考えだ。