2025.08.22 【育成のとびら】〈56〉1年目社員の4人に1人、メンタル面の支援をしてもらっている実感「全くなし」

 近年、ビジネスパーソンのメンタルに関する取り組みが注目されている。職場の心理的安全性を高めるとチームとしての成果を最大化できる効果も高まるとの研究が発表されて以来、ヘルスケアの観点だけでなく組織開発の観点からも関心が寄せられている。

 心理的安全性の高いチームづくりの第一歩は、「相手の理解者であることを示すこと」とされているが、メンタルや心理的安全性への考え方は、世代間によって価値観が大きく異なる。

 経営者や管理職が、若い世代に成長と活躍を求めるならば、彼らのメンタル面への考え方や感じ方を正しく認識することが重要だ。

 そこで、今回から3回にわたり若手社員の成長を支える、精神支援の仕組みについて考えていきたい。

 まず、当社ALL DIFFERENTがラーニングイノベーション総合研究所と社会人1~4年目の新入社員・若手社員1200人を対象に行った2024年の調査から精神支援について課題を探る。

 精神面のサポートについては「十分にしてもらっている」と回答した割合は社会人1年目が22.7%、2年目が18.7%、3年目が9.7%、4年目が14.7%だった。「十分にしてもらっている」「してもらっている」を合わせた割合は、全ての年次で半数を超えた。

 一方、「全くしてもらえていない」と回答した割合は、社会人1年目が25.3%、2年目が21.7%、3年目が17.7%、4年目が20.7%だった。1年目社員は、4人に1人が「全くしてもらえていない」と感じていることが分かった(図)。

 社会人経験の浅い新入社員や若手社員ほど不安や緊張を抱えやすいだけでなく、課題に直面した際の自己解決力がまだ十分に備わっていない傾向がある。そのため、不安などの壁を乗り越えるには、周囲のサポートが重要なカギとなる。新入社員や若手社員がメンタル面の課題を解決できないと、成長の停滞だけでなく、早期退職リスクにつながるからだ。

良き相談者を

 業務経験や社会人経験が浅いメンバーのメンタルをサポートする代表的な取り組みの一つにメンター制度がある。メンターとは「指導者」「良き相談相手」という意味で、古代ギリシャの叙事詩〝オデュッセイア〟に登場する「メントル」という指導者の名が語源とされる。

 現代のビジネス現場のメンター制度は、社会人歴の浅い新入社員や若手社員(メンティー)の業務上の悩みや課題などに対して、知識や経験のある先輩社員が支援する制度を指すことが多い。

 メンターは、メンティーの直属の上司以外の社員が務めるケースが多く、メンターとメンティーの関係は原則1対1で構築する。メンターの役割は、メンティーへの精神的支援やメンターの持つ技術やマインド、ノウハウの伝達を通じてメンティーを育成していくことなどがある。

 メンター制度は若いメンバーのメンタルケアの一環として有効な仕組みだが、導入にあたっては押さえるべきポイントがある。次回、そのポイントを解説する。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は9月第2週に掲載予定】