2025.09.24 シャープ、宇宙用太陽電池事業を拡大 売上高を27年度に5倍へ(24年度比)
SLIMに搭載した薄膜化合物太陽電池
LEO分野で存在感示す
シャープは、1959年に太陽電池開発を始めて以来蓄積してきた技術力や信頼を武器に、宇宙用太陽電池事業を拡大させる。宇宙用太陽電池の売上高を26年度に24年度比2倍、27年度には約5倍に高める。
同社の宇宙用太陽電池事業は、76年に日本が初めて打ち上げた実用衛星「うめ」に同社製単結晶シリコン太陽電池が搭載されたことから始まった。国内で唯一、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に認定された太陽電池メーカーであり、半世紀にわたって180機以上の実用衛星に採用されてきた。開発・生産は奈良県の天理・大和郡山の2拠点で展開している。
小型月着陸実証機「SLIM」にも搭載
激しい温度の変化や降り注ぐ宇宙線といった宇宙空間の過酷な環境下でも性能を発揮できる高い技術力・信頼性が評価され、近年ではJAXAの小型月着陸実証機「SLIM」にも搭載された。
搭載されたのは、01年から開発に取り組んでいる高効率な化合物3接合型太陽電池。同社が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて22年に当時世界最高の変換効率32.65%を達成した化合物3接合型太陽電池モジュールと同様の技術で開発された。薄いフィルムで太陽電池セルを封止した構造で、軽量かつ曲面への搭載も可能なフレキシブル性を備え、高効率化と軽量化が求められる宇宙用途に適した仕様を実現した。
今後も火星衛星探査計画「MMX」、深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」の打ち上げが計画されており、同社製高性能宇宙用太陽電池の活躍の場は広がりそうだ。
今期は世界でもトップクラスの宇宙用展示会に出展している。3月、米ワシントンDCで開かれた「Satellite 2025」に出展。9月29日~10月3日に豪州で行われる宇宙国際会議「IAC 2025」にJAXAと共同出展するほか、11月にドイツで実施される「Space Tech Expo Europe」に参加する。技術力をアピールし、ビジネスチャンスをつかむ。
シャープエネルギーソリューションの五角博純代表取締役社長は「宇宙用太陽電池市場は、低軌道通信衛星(Low Earth Orbit=LEO)打ち上げの拡大を背景に、24年から27年にかけ、年平均76%増で成長する見通しだ。特にLEOの分野で当社は高い存在感を示していく」と話す。
衛星打ち上げコストの低下を背景に、通信用途でのLEO打ち上げが加速するほか、LEO市場では新興企業の参入も相次ぐ。
五角社長は「こうした新興企業からの引き合いは現状かなりいただき、サンプル出荷も多い。国内外の新興企業から問い合わせがあり、既に取引いただいている企業の中には受注を倍増するケースもある」と強い手応えを得ている。
「当社の宇宙用太陽電池は、低軌道から静止衛星など高軌道、惑星探査から深宇宙まで幅広い領域に対応している点が強み」とし、27年度宇宙用太陽電池事業の5倍増を目標に飛躍を目指す。