2025.09.26 【関西エレクトロニクス産業特集】大阪・関西万博の取り組み 近畿総合通信局 野水学局長に聞く

ローカル5Gや無線給電など会場内で電波の有効活用

 近畿総合通信局(野水学局長)は、大阪・関西万博の開催に当たり、会場内で電波が有効に活用されるよう、必要な周波数の確保・割当などを行うとともに、期間中、特別電波監視体制を構築し、博覧会協会や関係機関と連携しながら要員を適切に配置して監視を強化している。会場ではローカル5Gやワイヤレス給電などが活用されており、これらの電波利用システムの普及に向けて支援を強化する。

 会場内ではさまざまな場面で電波が活用されているが、あらかじめ関係機関と調整を行い、必要な周波数の確保・割り当てを実施。会場内で使用される無線局について他の無線局に混信を与えないことを確認し免許を付与している。

 また、来場者のモバイル利用への対応のため、携帯電話基地局の整備による安定した通信利用環境の確保を携帯電話事業者に要請している。

 会場内では警備用、放送事業用、電気通信事業用などの重要な無線通信に対する妨害電波を迅速、確実に把握・排除できるよう、会場や周辺に電波監視施設を整備。電波監視を強化しているが、開幕以降、現時点まで重要な無線通信に対する干渉、妨害事案は発生していないという。

 今回の万博のコンセプトは「未来社会の実験場」。

 ICT分野においても、次世代の高度通信技術の開発や社会実装の具体的な形を示している。パビリオン内にあるロボットなどの操作では遠隔操作などでローカル5Gを使用。大容量・低遅延・周波数占有で確実な通信を確保している。

 また、会場内を走るEVバス運行用では、ワイヤレス給電システムを活用。一部の周回バスにおいてワイヤレス給電による運行を行っている。

 野水局長は「ローカル5Gを活用したロボットの遠隔操作などがノウハウの蓄積につながっている。ICTに関連するイベントも同様だ。支援することで社会実装につなげたい」と話す。

 そのほか、関連機関が次世代通信技術を活用した展示やスタートアップの展示を実施。総務省は5月下旬からEXPOメッセ「WASSE」で、Beyond 5Gが実現した未来の社会・生活のイメージについて、体験機会を提供する大規模な展示会を開催した。「開催期間中4万人を動員した。通信の進歩を示すことができた」と野水局長。

 情報通信研究機構(NICT)は9月16日から22日まで「FutureLife Experience」において、ICTスタートアップの展示などを実施し、「ICTスタートアップが魅せるちょっと先の未来」を体感できる機会を提供した。この中で17日には起業家精神にあふれる若者たちによるピッチイベントを開催。神戸女学院高等学部、兵庫県立国際高等学校を表彰した。

 野水局長は「万博のイベントも通じてICT分野の人手不足の解消、人材育成につなげたい」と語った。