2025.10.29 日立と米商務省、送配電網の強化へ覚書締結 AI時代のエネインフラ視野に協議

送配電網の強化に向けて覚書を締結したラトニック米商務長官(左)と日立の德永社長兼CEO

 日立製作所は、送配電網の強化に向けて、米商務省と覚書を結んだ。データセンターへの安定的な電力供給や人工知能(AI)の進化を支えるエネルギーインフラへの投資を視野に合意したもので、両者は実現に向けて協議していく。

 両者による覚書の締結は28日に発表した。日立は、子会社の日立エナジーによる米国での変圧器の生産能力の拡大や、送配電網に関連した機器の現地生産に向けて検討し、エネルギーの安全保障や送配電網のレジリエンスの向上を支援。さらに、同国各地での雇用創出やAIによるイノベーション(革新)も後押ししていく。

 日立は、日米両政府が同日公表した「日米間の投資に関する共同ファクトシート」にも触れ、「両政府の戦略的投資を歓迎する」と表明した。送配電網の強化や次世代原子炉として注目を集める小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」 の建設など、米国で安定的な電力供給やAIによる革新を実現するために必要なプロジェクトがファクトシートに盛り込まれた。日立は、グループ内の多様な事業の強みを結集し、こうした取り組みに貢献したい考えだ

 日立の德永俊昭社長兼CEO(最高経営責任者)はコメントの中で、「エネルギーは21世紀の経済力の生命線。発表された日米両政府の戦略的投資は、グローバルな社会インフラの発展とAIによるイノベーションを力強く後押しするものであり、日立は日米両政府とともに歩みを進めていく」と意欲を示した。

 日立は9月、日立エナジーが米国で送配電機器の製造能力を拡大するため、同国の電力業界史上で最大規模となる10億ドル超の投資を行うと発表した。バージニア州サウスボストンの大型電力用変圧器工場の新設に約4億5700万ドルを投じるほか、全米各地の既存施設も大幅に拡張する。米国では、トランプ政権のAIアクションプランに沿ってAIデータセンターが拡大しており、それに伴い増加するエネルギー需要に対応する。またBWRX-300 は、北米初のSMRプロジェクトで採用され、米GEベルノバと日立の合弁会社がテクノロジーパートナーとして参画している。