2026.07.27 【半導体総合/エレクトロニクス商社特集】オングストローム時代へ進む 先端半導体 市場は1・5兆ドルに

横浜でのイベントに来日したTSMCのケビン・ジャン氏(出所=TSMC)横浜でのイベントに来日したTSMCのケビン・ジャン氏(出所=TSMC)

スイスSTMicroelectronicsのAI人型ロボット向けMCU(15日、東京都)スイスSTMicroelectronicsのAI人型ロボット向けMCU(15日、東京都)

 人工知能(AI)の革新に欠かせない先端半導体は、一つ一つを切り出す前のウエハーを作る前工程の微細さをnm(ナノメートル、ナノは10億分の1)でなくÅ(オングストローム、100億分の1メートル)で表現する時代に入った。一方で微細化よる消費電力増への対策として、切り出した半導体をパッケージに収める後工程で通信を電気から光に置き換える光電融合が注目を浴び、日本の得意分野で海外大手の存在感が増す。

オングストローム時代の到来
 工程の微細さを長さの単位で示す慣行は元来、半導体を構成する主な要素として電圧で電流を通したり止めたりするトランジスタを制御する電極、ゲートの長さやそこに接続する銅配線の幅から生まれた。今日では実際の長さでなく性能が目安となりメーカーごとに指標も多様だが、それぞれ自社の従来工程との比較でnmからÅへ切り替える動きがある。

 半導体受託製造(ファウンドリー)最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は例年のイベント「Technology Symposium 2026」の一環として4月に米国で新たな技術工程表を発表。16Åの工程「A16」の量産時期を27年とする一方、より微細な「A14」を28年に、A14より面積が6%小さい「A13」や、A16と同じく高効率な裏面電源供給ができかつより微細な「A12」を29年に量産するとした。A14は2nmの「N2」と同一消費電力で最大15%の性能向上、同一速度で最大30%の消費電力削減をうたう。

 米Intel(インテル)のファウンドリー部門Intel Foundryは2026年6月に米国で開かれた国際会議「2026 IEEE/JSAP Symposium on VLSI Technology & Circuits」に参加。18Åの「18A」を25年から量産し、強化版として同一消費電力で性能を最大9%向上し、同一性能で消費電力を最大18%削減した「18A-P」も予定通り試作生産に入ったと報告した。これに先立つ26年5月に米投資銀行J.P.Morgan(JPモルガン)のイベントで「14A」の29年の量産や、「10A」「7A」の開発着手も明らかにしている。

 韓国サムスン電子はÅに準じた表記を使わない。ただ同国の半導体専門メディアである「The Elec」によると、26年7月に同国で開いたイベント「SAFE Forum 2026」で「SF1.4」を29年、その改良版「SF1.4+」を30年に量産予定だと確認している。SF1.4はおおむねTSMCのA14、インテルの14Aに相当するとみられる。

続くAIの追い風
 TSMCはA14などで生産する先端品の用途として高性能スマートフォンやデータセンター(DC)サーバーを挙げAIに焦点を合わせる。AI市場は設備投資過剰を危ぶむ「AIバブル」懸念が後退。DCの性能面の陳腐化や電力消費増など課題は残るが26年も勢いは衰えない。機能別では自ら計画を立案し継続動作するエージェント型がソフトウエア開発で台頭。物理実体を制御するフィジカル型も人型ロボット中心に研究が進む。設置場所別ではDC上にあるクラウド型に加え末端の機器上のエッジ、ローカル型も広がる。


 26年6月公開の世界半導体市場統計(WSTS)春季予測によると同年の市場規模は1兆5112億4800万ドルで前年比89.9%増。メモリーが同3.5倍の8039億4100万ドルで過半数を占めるのは驚異だが種類別で全半導体が前年を上回り、まだら模様の25年までと異なる様相だ。27年もこの傾向は続く。

後工程への投資加速
 半導体の国際団体SEMIが26年7月にまとめた世界半導体製造装置の中央市場予測によると、26年の世界売上高(新品)は前年比23.2%増の1659億ドルで過去最高を更新する。AIインフラ、ロジック、メモリーの先端品に加え、後工程への投資が背景だ。

 後工程のうち検査を担うテスト装置市場は同31%増の153億ドルで、組み立て・パッケージング装置は同9.6%増の67億ドル。先進パッケージや多様な機能、性能の半導体をまとめる異種(ヘテロジニアス)集積の採用が拡大し、広帯域幅メモリー(HBM)の性能、信頼性要件の厳格化も影響する。