2026.08.10 【育成のとびら】〈79〉2026年度新入社員の仕事観③ 入社時の管理職志向、 依然男女で差
公平な仕事の割り当てや成長機会の提供がカギ
少子高齢化が進む中、企業にとって多様な人材が能力を発揮できる組織づくりが重要な経営課題となっている。ダイバーシティ経営を掲げ、幅広い層の活躍を推進する企業も増えている中で、特に女性管理職の育成は、意思決定の多様化や組織の活性化、企業価値向上の観点からも重要性が高まっている。では、2026年度に入社した新入社員はどのようなキャリア観を持っているのだろうか。ALL DIFFERENTとラーニングイノベーション総合研究所の調査結果をもとに、新入社員のキャリア志向の変化を男女別に比較するとともに、D&I研修を実施した企業事例を通じ多様な人材が活躍する組織づくりを考える。
26年度の新入社員の多くは、学校教育の中でSDGs(持続可能な開発目標)やジェンダー平等について学んできた世代だ。固定的な性別役割意識は相対的に弱いと考えられるが、女性の管理職志向は依然として男性に比べて低いことがわかった。
26年度新入社員3849人を対象にした調査で、「将来会社で担いたい役割」を男女別に分析すると、「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい(管理職)」と回答した割合は男性が29.4%、女性は18.8%だった。「専門性を極め、スペシャリストとしての道を進みたい(専門職)」は男性32.0%、女性29.3%で、管理職・専門職とも目指す割合は女性より男性が高かった。
経年変化を見ると、「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい(管理職)」と回答した女性の割合は、2014年の調査開始時から上昇しているものの、伸びは12年間で4.3ポイントにとどまった。一方、男性の回答は12年間で6.0ポイント減少した(図1・2)。

誰もが持つ「思い込み」「思考の偏り」の払拭が重要
調査から、入社時点で管理職を目指したいと考える女性は増えているものの、男女間のキャリア志向の差が依然として残っていることがうかがえた。
しかし、キャリアに対する考え方は、入社後にどのような仕事を任され、成長実感を得られるか、という職場環境によって変化する可能性がある。本コラム19回目で紹介した、中原淳氏(東京大学准教授=当時、現・立教大学教授)と当社が共同で行った大規模調査(ワーキングマザー含む女性2523人、男性4879人)で、自身の職場について「仕事の割り当てが男女平等である」と答えた女性一般社員では「昇進したい」層が50.0%あり、「昇進したくない」層は42.4%と7.6ポイントの有意差が表れた。仕事の割り当てに対する認識と女性の昇進意欲とに関連があることを示しているといえよう。
新入社員は職務経験が乏しいため、キャリアを思い描く上での材料が身近な家族や学校、メディアなどから得たイメージに限定されやすい。そのため、家庭や教育の環境によっては、仕事やキャリアパスについて具体的なイメージを描けない人も多い。そこで、男女問わず新入社員が今後のキャリアを考える上での糧となるのが、入社後の経験や成長の機会になる。
では、これらを得るためには、何が必要なのだろうか。当社は、企業や管理職からのアサインメント(仕事の割り当て)が重要なカギを握るとみている。
ただ、実際のアサインメントには、仕事を任せる側のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み・偏ったものの見方)が影響することも少なくない。例えば、「育児との両立が大変そうだから」「若手だからまだ早い」といった、無意識の判断が成長機会の差につながる場合がある。しかし、無意識ゆえに課題が顕在化しにくいのが実態だろう。
解消のヒントとして、社員全員が働きやすい環境づくりを目指し、アンコンシャスバイアスへの学びに取り組んだ情報通信の企業事例を紹介したい。
同社では育休復帰者の「思うように働けずもやもやしている」という声をきっかけに、育休復帰者や外国籍人材、障がい者人材など誰もが働きやすい環境づくりのため、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン=多様性と包摂)研修を行った。
研修は、D&Iの組織全体への理解と浸透を図るため2段階で設計。まずは管理職向けにD&Iがもたらすメリットや企業価値向上への理解をゴールとする研修を実施した。自分自身の思い込みに気付いてもらうため、研修冒頭で「なぜダイバーシティを推進する必要があるのか」という問いを提示し、研修内で推進するメリットを自社の状況に当てはめて検討した。
その後、「自身のアンコンシャスバイアスに気付き、多様な人材への配慮を考える」というテーマで非管理職向け研修を開催。女性活躍やLGBTQ+を巡るさまざまなケースを考えるワークショップに取り組み、最終的に「こんな時どうするか?」「自身の業務で何ができるか?」といった、今後の行動への落とし込み方を参加者それぞれが考えた。
研修後、参加者からは「実際に自分の身の回りにも多様な人材がいることを意識していなかったことに気付いた」「ワーキングマザーということもあり、思うように働けず苦しかったが、研修を受けて気持ちが楽になった」「今後、自身がリーダー職になった際に意識すべきことを学べた」という声が上がったという。
アンコンシャスバイアスは管理職だけでなく、新入社員も含めて誰もが持っているものだが、「無意識」であるがゆえに自身では気付きにくいため、さまざまなメンバーがともに学び、日々の業務の中で自らの思考や判断を振り返る機会を企業側でつくり継続的に見直していくことが重要だ。
また、新入社員は、入社した時点ではまだ管理職像を具体的に描けていない人も多い。だからこそ企業には、性別にかかわらず挑戦機会を公平に提供し、多様なキャリアの選択肢を示していくことが求められる。その積み重ねが、将来的に女性が管理職を目指しやすい組織づくりにつながるのではないだろうか。 (つづく)
【次回は2026年8月31日号に掲載予定】









