2020.07.09 【家電流通総合特集】20後半戦 わが社の家電流通戦略東芝コンシューママーケティング
東芝ストアーのQRコード付きPOP
オンラインを積極活用
東芝コンシューママーケティングは、今年1月からの新体制でコロナ禍の中を突き進み、1-6月の売上げが前年超えを果たした。千田一臣社長は「下半期も新商品をしっかり売り込み、来年に弾みをつけたい」と考えを示した。
同社は、親会社の東芝ライフスタイルがマイディアグループ(美的集団)傘下となって以降、会計年度を1-12月に変更。その半面、組織変更や人事異動は従来通り4月に行っていた。
今回、組織変更を初めて1月に実施。効率化を図るため、9支社を7支社に、70支店を60支店に統廃合するとともに、支社内では地域店と量販店それぞれの責任者を設けた。
千田社長は「家電流通において、量販店と地域店(東芝ストアー)は本来やるべきことが違うにもかかわらず、以前は担当が同じだった。今回、担当を分けたことで、各店舗に合わせた柔軟な対応ができるようになった」と話す。
東芝ストアーは、新型コロナの影響で一時、300店が営業休止に追い込まれた。
千田社長は「緊急事態宣言が発出された4月は特に苦しかったが、その後6月までに盛り返した」と説明。東芝ストアー全体の売上げは上半期前年並みで推移した。
一方、量販店は、それぞれ店ごとに方針が違うため、同社としては臨機応変な対応が求められた。
千田社長は「各社とコミュニケーションを取りながら、できることをできる範囲で行うしかなかったが、社員一丸となってアンテナを高く広く掲げ、対応に当たった」と話す。
難しい対応を迫られたコロナ禍では、小回りの利く対応力を強みに、販売店に応対してきた。
千田社長は「企業規模が大きくなればリスクも大きくなる。大企業ではないからこそ社員一人一人が裁量し、スピード感のある対応が可能」と強調する。
一方で、白物家電のみの取り扱いとなって、商品ラインアップが減っている。
千田社長は「売上げを拡大するには、個々の商品を強く、品数も増やすことが大切」とし、新商品を積極的に投入していきたい考えを示した。
東芝ストアーの力強さを再確認
地域店運営には、新商品の展示会や、優秀販売店を表彰する「東芝ストアーコンテスト」などの欠かせないイベントがある。
今年のストアーコンテストは「優秀店を表彰する重要な催しだが、(新型コロナの)状況を総合的に判断し、中止することにした」と千田社長。
商品展示会も「3密」を防ぐことを重視すると開催が難しい。実際、5-6月は中止にした。
新商品の知識を深めることは接客の際にも重要だ。展示会が中止となったことで、それを補う施策も求められる。
千田社長は「各担当者はQRコード付きの小冊子を販売店に持参し、新商品について知ってもらうよう働きかけている」と話す。
A4サイズだが、折り畳むことでポケットサイズの小冊子として持ち運びしやすくした。QRコードを読み込むと、商品の新技術などを技術担当者が説明する1-2分程度のオリジナル動画が視聴できる。
オンラインを活用した新しい方法で「ニューノーマル(新しい日常)」への対応を目指した試みだ。オンラインの積極活用は、東芝ストアーの店づくりにも生かしている。
接客時、「商品の説明は聞きたいが、近い距離での会話は控えたい」というお客の声があった。それに対応するために、東芝ストアーではQRコード付きのPOPを展示。QRコードをお客が読み込むと、販売担当者がその商品の説明をする動画が視聴できる。これにより、お客は安心して商品を知ることができる。
これからは夏個展が本番を迎える。開催の有無は各店の判断に委ねられる中、440店が開催することを決めた。
千田社長は「オンラインフェアや(オンラインビデオ会議システムの)Zoom(ズーム)を利用した本社からの情報発信など、状況に応じてスタイルを変化させる必要がある」と話す。
18年4月から、同社では「ネクスト・ライフビジョン政策」と題して、増客活動、後継者育成、教育の充実などに取り組んでいる。
千田社長は「困りごとは店ごとに違う。マニュアル通りの対応ではなく、個別の方法で対応している」と話す。
コロナ禍では、地域ごとに状況が異なり、運営方針なども地域店ごとに柔軟に対応することが必要だった。
「方向性やスピード感覚にばらつきが出る中、担当者には臨機応変な対応力が求められた」と話す千田社長は、「今後は各東芝ストアーの『目標の一致』が必要になる。ときには変化し、動きを止めてはいけない」と力を込める。
今後は「ウィズコロナ」を視野に入れ、生活がどう変わるか動向を注視し続ける必要もある。千田社長は「コロナ禍で、東芝ストアーの力強さを再確認することができた。前向きに、どう伸ばしていくかを考え、積極的に施策を打ちたい」と力を込めた。