2020.07.31 Let’s スタートアップ! タイミー“スキマバイト”に商機あり!大学生が作ったアプリで急伸
成長が著しいスタートアップ企業を取材し、新しいビジネスの息吹や事業のヒントを探る「Let’s スタートアップ!」。
今回は、アルバイトのマッチングアプリ「タイミー」を運営するタイミー。同社の小川嶺(おがわ・りょう)代表は、現役の大学生でありながら20億円を資金調達するなど、その経営手腕は高い評価を受けている。会社設立の経緯や将来像、ウィズコロナ時代を生き抜く施策などを、広報の釡谷実希さんに聞いた。
働き手と企業のニーズを満たすアプリ「タイミー」、テレビCMも話題に
駅でドタキャンされた女優の橋本環奈さんが、「急にヒマになったこの時間、どうするんだよぉ~!」と、ひとしきり暴れる。それが終わると、「あ、バイトしよ」とスマートフォンで仕事を探しだす——。
2019年末から放映された、このテレビCMを見たことはあるだろうか。ここで紹介されていたアルバイト探しのサービスが、タイミーが運営するアルバイト探しアプリの「タイミー」だ。
タイミーは、「空いた時間に働きたい人」と「すぐに人手が欲しい店舗・企業」をターゲットにしたアルバイトのマッチングアプリだ。最大の特長は、雇用したい企業と働きたい人の仲介プロセスを “短縮”できることにある。
これまでのアルバイト仲介システムでは、求人を見つけた働き手は、自ら面接を申し込み、就業条件などの交渉を行ってから働き始めるのが一般的だった。
しかし、タイミーの場合、働き手がアプリに登録し、そこから仕事に申し込むと、条件さえ合えば、面接を受けなくてもすぐに働ける。
給料も、仕事が終わったタイミングでアプリに反映される。タイミーでは、働き手が空いた“スキマの時間”など、都合のよい時に働けて、その日のうちにお金を得られるというわけだ。
一方、求人を出す店舗・企業側にもメリットがある。例えば、急に大人数の予約が入りスタッフが足りなくなった時や、アルバイトが病気で来られなくなった時など、すぐに働き手が欲しい場合に、タイミーを使えば素早く効率的に人手を確保できる。
タイミーの求人は、ターゲットとする働き手や企業のニーズから、短期のスポット需要が中心。この点も一般的なアルバイトの求人サービスと異なり、サービスの独自性につながっている。
サービスは求人掲載料が無料。店舗や企業はアルバイトの人が働いた後、時給の30%に当たる金額を手数料としてタイミーに支払う仕組みだ。
こうした仕組みが働く人と店舗の双方から支持され、タイミーのユーザー数は急増している。
「バイトの不便な環境を変えたい」大学生社長の経験が起点
ユニークなバイトアプリ「タイミー」。釡谷さんは、タイミーは小川代表の実体験から誕生したと説明する。
小川は高校生の頃から「起業したい」と考えていて、大学生になってからは何度か事業の立ち上げを経験していました。
その中で、タイミーのひとつ前、ファッション系アプリを作った際に、両親を含め各所から数十万円を借りたそうです。しかし、その事業は数カ月後に行き詰まってしまったのです。
小川は、お金を返済するためにコンビニや飲食店、肉体労働の日雇いアルバイトなどをしたといいます。しかし、バイトの中には働ける日が前日の夜に連絡が来るまで分からなかったり、希望のシフトに入れなかったりといったことがあったのです。
その時、小川は「こうしたアルバイトの不便な状況をよくすれば、すぐに働けてすぐお金がもらえる世界が作れるのではないか」と考えたそうです。「タイミー」のアイデアは、ここから生まれました。
小川が「タイミー」の着想を得たのは2018年3月です。その時、一緒に働く仲間や資金集めにすぐに動き出し、18年8月には「タイミー」をリリースしました。
タイミーの仕組みは、予定と予定の間を持て余し、その時間にアルバイトをしたいと考えていた若い世代に大きく受け入れられた。
働き手の登録が増えるに従い、人手不足が深刻となっている飲食店などを中心に求人を出す店舗の登録も増えていった。
サービスが軌道に乗る中で、小川代表は、2018年12月には3億円、2019年10月には20億円の資金調達に成功。19年11月にはたテレビCMを放映し、「タイミー」の名を全国区に押し上げた。
タイミーのユーザー登録数は約135万人、導入店舗数は約1万9000カ所。ユーザーは20代が中心で、男女の比率は半々。リリースからわずか2年でこの実績を達成した。
新型コロナ禍でも希望がある
ここまで順調に成長してきたタイミーだが、新型コロナウイルスの流行によって厳しい局面にあるという。
当社はこれまで「前月比数倍」という感じで売上げが伸びていました。しかし、新型コロナの流行で、かなりの落ち込みになってしまいました。
タイミーは、飲食店の方を中心に登録していただいたため、緊急事態宣言が出た5月に求人募集が大幅に減ってしまったことが原因です。
一方で、働き手である登録者の「働きたい」というニーズは高まっていました。普段アルバイトをしている飲食店が閉じてしまい、仕事がなくなってしまったからです。
しかし、飲食店の休業が相次ぎ、それに伴ってタイミーの求人募集も減ってしまっていたため、働き手のニーズを満たすことができませんでした。
新型コロナで打撃を受けたタイミーだったが、希望もあった。新型コロナによる“巣ごもり需要”で、物流やデリバリー、スーパーマーケットなどに関連する求人が増えたのだ。そのため、タイミーに掲載される案件数は回復しつつある。
二つの施策でウィズコロナ時代に挑む
こうした経験を経て、タイミーでは今後も続くであろうウィズコロナ時代に対応するため、二つの施策に取り組んでいくという。
一つは、登録店舗をより幅広い業界に広げていくことです。タイミーの求人は、今まではどちらかといえば飲食店に偏っていました。
しかし、新型コロナの流行をきっかけに、これまで接点があまりなかったスーパーマーケットやコンビニなどからの問い合わせが増えました。
このことから、これからは求人を出してもらう業界を広げていくことで、例えば、忙しくなった業界と人手が余ってしまっている業界のバランスを整えられるような存在になれればと考えています。
もう一つは、デリバリーサービスです。「タイミーデリバリー」という新規事業を立ち上げました。
これまでのデリバリーサービスとの大きな違いは、手数料が商品代金の15%と低めに設定していることです。
また、一般的なデリバリーサービスでは注文が入るたびに配達者が商品をピックアップし、利用者の自宅まで一往復しています。
しかし、タイミーデリバリーでは30分前までに注文をしてもらって、飲食店などが一度の配達で複数のお客さんに届けるシステムを採用しています。すると、配送コストを抑えられて収益性が高くなり、手数料も下げることができるのです。
新型コロナをきっかけに様々なデリバリーサービスが登場していますが、飲食店からは「導入したいけど手数料が高い」という声をよく聞きます。
そこで手数料をできるだけ抑えた形で、使ってもらえるデリバリーシステムを作ろうと始めたのがこのサービスです。
働き手が新しい価値観に気付けるサービスを目指す
小川代表が現役大学生ということもあり、社員の平均年齢が20代というタイミー。若い彼らは、どのような将来像を描いているのだろうか。
アルバイトのアプリで始めた「タイミー」ですが、最近では使い方が広がり、採用ツールの一つとして活用されることが増えてきています。
具体的には、アルバイトの人が実際に働いてみた後に、働き手と店舗・企業が互いに「いいな」と思えれば、その後はタイミーを介さず長期採用へ進む。こうした採用の入り口になる事例が増えているのです。
世間から見ると、今の当社はどちらかというと、「単発バイトのアプリの会社」というイメージが強いと思います。
今後はそれだけでなく、現在、「ギグワーク」と呼ばれる単発の働き方と、長期採用での働き方の間の大きな隔たりを埋めていけるような存在になれればと考えています。
同時に、働き手が一度その仕事を体験したことで、自分の中の新たな価値観に気付いてもらえるようなサービスも提供していきます。
私たちはこれを「大人版キッザニア」と呼んでいるのですが、新たな体験が手軽にできて人生の選択肢が広がるような、そんなプラットフォームになりたいと考えています。
サービスを“共に創ってくれる”仲間を増やしていきたい
最後に、今タイミーが必要としているものを聞いた。
必要なものはたくさんあるのですが、一つを選ぶなら「共創する仲間」です。
当社が今後、よりよいサービスを提供していくためには、働き手であるワーカーさんが、もっとたくさん必要ですし、店舗・企業などのクライアントも増やしていかなければいけません。もちろん社員も必要です。
そういった人たちを全て合わせて、“新しい働き方”や“新しい価値”を一緒に作ってくれる「共創する仲間」を求めています。
- 社名
- タイミー
- URL
- https://timee.co.jp/
- 代表者
- 小川 嶺(おがわ・りょう)
- 本社所在地
- 東京都豊島区東池袋1-18-1 Hareza Tower 27階
- 設立
- 2017年8月
- 資本金
- 1億円(2019年10月末現在)
- 従業員数
- 88人(2020年7月現在)
- 事業内容
- インターネットメディアおよびアプリケーションの企画・開発・運営、マーケティング、ブランディング、各種コンテンツの企画・制作