2020.08.11 【SMT/SMD特集】技術の高度・高性能化進む

SMDは5G対応で一段と小型化が進展する

実装各社はスマートファクトリーをグローバル市場で推進実装各社はスマートファクトリーをグローバル市場で推進

 SMT(表面実装技術)が高度化している。第5世代高速通信規格5G用スマートフォンおよびIoT端末、自動車のECUや各種モジュールにおける高密度実装化ニーズの高まりがSMD(表面実装部品)の小型化に加速をつけ、実装システムのスマートファクトリー化を推し進める。

超小型化が加速

SMDの動向

 新型コロナウイルスの感染症が広がり、企業の事業活動を制限。世界の景気低迷はSMDの需要にも大きく影響している。そうした中でもSMDの小型化技術は進展している。

 抵抗器は、自動車のCASEの進展を視野に新製品開発が展開されている。さらに5G用スマホ、IoT、AIなどとの融合による多方面への波及効果で新たな市場形成に期待がかかる。

 5G用スマホ向けは、0603サイズ、0402サイズの需要が伸びる見通しだ。電源回路では電流検出用途で低抵抗チップが用いられ、中でも金属板タイプの需要が伸びている。

 さらにモジュールでは、部品内蔵基板で小型化する動きも見られる。銅めっき接続方式の場合は銅めっき電極を形成した専用部品が必要で、チップ抵抗器では厚みが0.13ミリメートルまで極薄化。

 今後、IoTを取り巻く各種端末、モジュールの小型化がさらに進展する。次世代チップとして0201サイズの提案が始まった。

 車載向けでは、電源周辺部の回路向けに硫化に強く硫化発生による抵抗値断線を防ぐために耐硫化チップ抵抗器が使用される。また、自動車用エンジンの制御回路のほか、各種ECUなどでは耐サージチップ抵抗器を搭載。電動パワーステアリングや電動ブレーキなど、様々な回路で利用されているモーターへの負担が大きくなっている。また、アクチュエータやバッテリ回路も多い。金属板抵抗体が製品ボディーを兼ねるパワー低抵抗チップ抵抗器の大電流、ハイパワー、低抵抗化技術が進展している。

 積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、車載向けに低損失、3端子、共振用、高耐熱、高電圧、大容量化に向けての開発が進展。一方では、5G向けに超小型で大容量化に向けた動きが活発化している。0402サイズや0603サイズといった超小型品における大容量化技術が進展。最小サイズの0201サイズでは、0.1μFまで大容量化が進展。基板内蔵用では厚み0.064ミリメートルまで極薄化している。

 アルミ電解コンデンサは、電解液タイプに加えポリマータイプ、ハイブリッドタイプのラインアップが充実している。ポリマー系は車載、5G基地局向けの需要に対応する。

 特にハイブリッドコンデンサは、低ESR、高信頼性の高耐電圧を実現する。新たに既存製チップタイプで80V程度まで高耐圧化を実現。しかも135度対応の高温度信頼性を確保。また、150度対応の新製品が販売されるようになった。

 タンタルコンデンサは、タンタル粉末のCV積を大きくすることで、容量が飛躍的に拡大。小型化では、構造を一般的なモールド構造から下面電極構造にすることで薄型化。現在では厚み1ミリ内外まで薄型化技術が進展している。

 インダクタも5G、車載向けを中心に技術が進展する。高周波用インダクタは、高Q化、高精度化と小型化の両立が要求されている。現在では、0402サイズの高Q化技術が進展している。

 電源用のパワーインダクタは、フェライト巻線型、フェライト積層型のほか、ここ数年でメタル系パワーインダクタでの巻線、積層、さらには薄膜の3種、サイズは1608サイズまで小型化。メタル積層チップパワーインダクタでは、1005サイズが世界最小となった。

 車載用インダクタは、信頼性が強く求められることから、ECU用インダクタでは、125度対応から150度対応へと高温対応が変化。中には180度対応インダクタも開発されている。

スマートファクトリー化推進

SMTの動向

 新型コロナウイルス感染の世界的な拡大により、今年は表面実装(SMT)関連の大きな展示会が中止となった。国内では6月の「実装プロテック」、海外では4月の「ネプコンチャイナ」(上海)が中止。8月の「ネプコンアジア」(中国・深圳)は開催が予定されているが、日系企業は出展を見送ったところが多い。

 中国の製造業は春節明けから回復の動きが見られ、4月以降、徐々に活発化し現在はほぼコロナ前に戻っていると言われている。

 日本ロボット工業会の20年4-6月期の受注、生産、出荷実績によると、電子部品実装用ロボット(実装機)の輸出は中国向けが増加したことで、輸出台数3831台(前年同期比23.7%増)、同輸出額573億円(同14.4%増)と2桁の伸びを示した。中国の製造業の回復を裏付けている。

 ドイツが提唱する第4次生産革命「インダストリー4・0」に端を発して、中国に限らず国内外で製造業におけるIoT、AI、ロボットなどの技術を活用した「スマート化」に関心が高まっている。

 表面実装機各社は、IoT/M2M技術を駆使した「スマートファクトリー」の提案をグローバルに推進している。

 スマートファクトリーは、表面実装ラインを構成する装置をつなぎ(M2M)、装置間で情報をやり取りすることで、生産立ち上げに必要なデータや生産計画の作成から、実装工程全体のスケジューリング機能、必要な部材の準備から生産ラインでの生産完了予告時間まで、精度よく見積もることができる。

 部品管理システムと連携し、必要な部品の数量、補給タイミングを正確にシミュレート。人手では困難な部品補給や段取り替え時間も考慮した生産計画を簡単に出力するなども可能になる。

 各社はスマートファクトリーを実現する最先端装置を開発、製品化するとともに、他社との連携で実装機から部品保管庫、異形部品実装など前後工程を含めた実装ラインのトータル提案を推進する。

 スマートファクトリーの普及に向けたオープン化も進む。日本ロボット工業会はSEMIと連携し、装置間の通信ルールを統一する規格「SEMI SMT-ELS」を制定し、国際規格として提唱、普及に取り組んでいる。これにより、実装ラインに設置された異なるメーカーの印刷機、実装機、基板検査機など装置間でのデータのやり取りが統一され、生産ライン全体での一貫した情報管理ができる。