2020.08.27 【化学材料特集】5Gなど次世代技術に照準R&D強化やコア技術で差別化を推進
化学材料の技術革新が加速している。IT・エレクトロニクス技術が高度化し、電子部品・デバイスへの技術要求が一段と厳しさを増す中で、化学産業には既存技術のブレークスルーに向けた新しい素材開発が求められている。化学メーカー各社は、第5世代高速通信規格5GやCASE、次世代半導体プロセスなどに照準を合わせたR&Dを強化し、コア技術を駆使した最先端材料開発を進めることで、差別化を推進する。
化学材料は、各種電子・電子機器や電子部品・半導体・ディスプレイ、自動車・輸送機器、製造装置、通信・社会インフラなどの技術進化を支えるコアとして、重要な役割を担っている。
日本の化学材料業界は、わが国の産業界を代表する基幹産業の一つ。世界の化学産業全体に占める日本の化学産業の企業規模は、欧米系の巨大化学メーカーなどに比較すると劣っているものの、最先端のIT・エレクトロニクス産業や先進の自動車、最先端半導体プロセスなどの分野では高い存在感を示している。
日本の化学材料メーカーは、高度な技術力と継続的なイノベーションを通じたソリューション提案により、ワールドワイドで実績を拡大している。
中長期で技術戦略
アプリケーション別では、今後の本格化が見込まれる5G通信や、CASEをキーワードとした次世代自動車、半導体の微細化、AI(人工知能)・IoT、自動化・ロボット化などでの新潮流に照準を合わせ、次世代や次々世代に向けた中長期での技術戦略の強化に努めている。
自動車分野では、ADAS/自動運転技術の高度化や、コネクテッドカーへの進化、電動化などに照準を合わせ、高速大容量通信を実現するための素材開発や、車載インバータ/コンバータ/LIB(リチウムイオン電池)向け材料、車載軽量化素材などの開発に力を注いでいる。
半導体関連分野では、次世代半導体プロセス材料開発が盛んに行われている。半導体露光分野では、次世代露光技術のArF(フッ化アルゴン)、さらにEUV(極端紫外線)リソグラフィ向けのプロセス材料開発や供給体制拡充の動きが活発化。
次世代パワー半導体向けの素材開発も活発で、SiC(炭化ケイ素)材料の開発や生産能力増強への取り組みが進展している。
スマートフォン、タブレット端末、ウエアラブル端末などのIT機器向けでは、5Gでの高速大容量通信を支える新規材料開発や、スマホの薄型・高機能化に向けた機能性材料、先進のフォルダブル端末などで不可欠となるフレキシブル素材開発などに力が注がれている。
環境/エネルギー関連では、LIB、全固体電池、太陽電池、燃料電池、蓄電システムなどのイノベーションのための新材料の開発が進展し、バッテリの大容量・高効率化に向けた取り組みが進められている。
最近の電子材料市場は、米中貿易摩擦激化の影響に加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う経済活動低迷により、大きな影響を受けているが、電子材料メーカー各社は今後も中長期での事業拡大に向け、積極的な取り組みを展開する。
M&Aなど活発化
日本の化学メーカーによるM&A(企業の買収・合併)や他社とのアライアンスの動きも活発化している。特に近年は、イノベーションの推進のため、オープンイノベーション戦略を強化する素材メーカーも増加しており、ICT関連、モビリティ関連、環境・エネルギー、医療機器/ライフサイエンスなど様々な分野でオープンイノベーションが志向されている。
生産プロセス改善では、デジタル技術を活用した開発効率向上や生産性向上への取り組みが進められており、大手化学メーカーを中心に、AIやIoTを活用した生産プロセスの最適化や、試作から量産までの期間短縮などの取り組みが図られている。
20年に入り、大手化学メーカー各社による30年を見据えた長期ビジョン策定などの動きも活発化している。各社は、今後も高度なイノベーション能力を武器に、様々なアプリケーションへの最適なソリューションを提供することで、中長期での事業拡大を目指す。