2020.09.11 【中部産業特集】日本ガイシエナセラシリーズ

エナセラ コイン(下段)

コイン型、量産開始

 日本ガイシは本年度、エレクトロニクス事業本部の重点課題として、新製品群立ち上げと新規用途開拓、既存事業の収益力向上を掲げている。

 昨年新設したADC事業部は、複合ウエハーやチップ型セラミックス二次電池「EnerCera(エナセラ)」シリーズ、窒化ガリウムウエハー「FGAN」など、他社では類を見ない新製品を手がけている。

 「EnerCera」シリーズは、200社以上のメーカーにサンプルを出荷して評価してもらっている。

 7月、コイン型「EnerCera Coin(エナセラ コイン)」高耐熱タイプの動作温度範囲(マイナス40-プラス85度)の上限を20度高め、105度まで使用可能とすることに成功し、9月から量産を開始する予定。

 「EnerCera Coin」は、セラミック製の積層電池部材に少量の電解液を染み込ませ、電極内をリチウムイオンや電子が移動しやすくした独自の半固体電池である。電極の成形に有機材料を使用していないため、熱安定性が高いことが特徴。

 小型・大容量で定電圧での出力が可能なリチウムイオン二次電池の特徴と、大電流出力と電源ICを不要とする定電圧充電が可能なキャパシタの特徴を両立している。

 今回の開発によって、リチウムイオン電池と同等以上の電池性能を有し、全固体電池と比較しても最高レベルの耐熱性能を持つことが実証できたため、車載や産業用など、様々な領域で使用されるIoTデバイス向けの小型電源として採用が進むことを見込んでいる。

 耐熱性が高い「EnerCera Coin」は、基板への電子部品の実装方法として一般的なリフローはんだ付けで回路基板に実装できる。

 300度程度の溶融樹脂が型に流し込まれる射出成形にも対応できるため、樹脂構造体に直接電池を埋め込むことが可能。高温実装の新しい方法としてアピールしていく考えでいる。

 105度への高耐熱化で、自動車室内の高温対応箇所(ドライブレコーダやエンジンルーム寄りの部品)などへの実装が可能となる。今後の開発は、動作温度範囲をさらに20度高めて125度を目指す。

 直径12ミリ厚さ1.0ミリメートルの「ET1210C-H」、直径20ミリ厚さ1.6ミリメートルの「ET2016C-H」の2種類を用意している。