2020.09.25 【九州・山口産業特集】新分野に積極取り組み 先端技術で顧客の課題解決へ

電動キックボードは福岡で実証実験(mobby ride)

VRゴーグルでARナビゲーションを体感(ビーブリッジ)VRゴーグルでARナビゲーションを体感(ビーブリッジ)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で人とモノの動きが大きく変化する中、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)は IT業界だけでなく、あらゆる産業分野で加速している。これまで九州・山口地域は東アジアへの距離の近さをビジネスに生かしてきたが、今やスタンダードとなった〝非接触〟は全国、世界への距離を問わない。「ニューノーマル」として全産業が新しい展開に向かっている。以前から全国区で活躍している九州や山口の企業も多い。コロナ禍の中で新分野、新事業へ取り組む九州・山口の企業の動きを紹介する。

 九州地域の経済規模は全国の約10%程度だが、19年度のIC生産金額は全国比43.7%と過去最高、四輪自動車生産台数は同14.9%で141万台の高水準と、いずれも高いシェアを占めている。山口県域は化学、石油、鉄鋼など基礎素材型産業が集積し、国内でも水素の利活用が進むほか、自動車関連では北部九州、広島県と合わせると一大集積地となっている。

 20年に入って新型コロナウイルス感染症の拡大とその防止策で、幅広い産業が影響を受けているが、今春スタートした第5世代高速通信規格5GをはじめAI(人工知能)、自動運転技術など、次世代に向けたテクノロジーへの取り組みは活発化している。

 九州は再生可能エネルギーの導入が進んでいるが、スマートグリッドやエネルギー管理システム等のエネルギーを効率的に賢く使う〝スマート〟化が求められている。

 先端技術を取り込んで顧客の様々な課題を解決するソリューションでは、感染防止対策としての自動化など、BCPだけでなく新たな分野への挑戦を生み出そうとしている。

 IT産業が集積し、エンジニアも多い福岡を中心に、九州ではスタートアップへの支援も盛んだ。QTnet(福岡市中央区)の新事業共創に向けたアイデア募集では、閲覧した資料の注目したページなどの情報を可視化するITツール(ject)、ARナビゲーションを活用した観光振興アプリ(ビーブリッジ)など、新たなサービスが提案された。

 電動キックボードのシェアリングサービスを紹介したmobby ride(福岡市中央区)は既に福岡市と共同で実証実験を行っている。HAB&Co.(大分市)は、企画から開催までワンストップでオンラインイベントの開催を支援するシステム「CASTON」を提案。北九州市にも拠点を持つラック(東京都千代田区)は、電子空間で物理操作を体験できるゲームプラットフォームを提案し、eスポーツでの全国的なカーレース大会などを想定している。