2020.09.30 【電波新聞70周年特集】 エレクトロニクス業界の発展に寄与ニューノーマル時代の報道めざす

電波新聞は創刊当時(手前左側)から題字デザイン、紙面を時代とともに変更しながら読者の声に応えてきた。手前右から2番目が5000号、手前右が10000号の紙面。後ろは5日前に発行した18000号

世界に視野、敏速・正確な報道へ

 業界に正確な情報を与える新聞を目指し創刊してから70年-。1950年(昭和25年)5月に創刊した電波新聞は今年70周年を迎えた。

 日本のエレクトロニクス業界は、グローバル競争の激化、業界再編など幾多の苦難を乗り越えて発展してきた。

 70年前と今では業界自体の立ち位置も変わり、様々な産業をつなぐハブとなる技術を持つ業界になった。

 産業の発展にとどまらず、日本全体の発展を左右する要の産業になりつつある。

 今、世界は新型コロナウイルスの拡大により再び大きな試練に見舞われている。エレクトロニクス業界には、この試練に打ち勝ち、ニューノーマル(新しい日常)時代の基幹産業として日本をけん引していくことが求められる。

 「全国の業者に正確な情報を伝える新聞、販売に結び付く広告効果のある新聞を業界のために作ってほしい」。

 パイオニア創業者の松本望社長(当時)ら業界の指導者からの説得を受けた電波新聞社創業者の平山秀雄は、業界に先見性と指導性のある専門紙の創刊に踏み切った。

 当時は〝ドッジ旋風〟と呼ばれた占領政策下に置かれ、100社ほどあった真空管メーカーのうち80社以上が倒産や転廃業する厳しい環境下。

 半面で民間放送の開始など明るい動きもあり、様々なエレクトロニクス企業や販売店が乱立する時期で、業界の指針となる媒体が求められていた。

 こうした時代に創刊した電波新聞は、新しい方向を伝えることを主眼に正確で敏速な報道に取り組んできた。

 特に平山秀雄は日本のエレクトロニクス産業の発展という視点だけでなく、世界に視野を向けていたことも他の媒体にはない独自性につながった。

 例えば電波新聞創刊後に米国一の専門紙「フェアチャイルド・パブリケーションズ社」と提携し、国際性に富んだ紙面づくりを進めたほか、日本のエレクトロニクス産業を世界の産業に育てるために海外向け英字媒体の発行にも努めた。

 電波新聞紙面でも海外のエレクトロニクス関連ニュースをいち早く報道。どこよりも早く海外の情報が得られる媒体として高く評価された。

 電波新聞社の歴史で切り離せないのが松下電器産業(現パナソニック)創業者・松下幸之助氏との出会いだ。

 中でも1951(昭和26)年1月15日付「松下土産は何か、間違いなきはフィリップス社との提携」と題した記事が幸之助氏との信頼を深くするきっかけにもなった。

 記事掲載の翌年52年10月に技術提携が成立した。この記事について幸之助氏は「平山さんとこの取材能力は大したもんや」と語ったという。

 こうしたエピソードなどを経て平山秀雄と幸之助氏は親交を深めていった。生前、幸之助氏は東京・五反田の電波新聞社本社にもフラっと立ち寄ったことがしばしばあったほどだった。

 幸之助氏だけではない。現在の主要電機メーカーはじめ、電子部品メーカーの経営者から技術者まで、深い関係を築くとともに業界に役立つ情報を発信。イベントや海外視察団の企画などを積極的に行いビジネスの発展に寄与してきた。

業界に寄り添った記事に注力

 電波新聞社の社是には「業界の健全な発展を念願として報道の任務に邁進する」という文言がある。

 エレクトロニクス業界の健全な発展を目指した報道と業界に寄り添った記事に注力してきた。

 コンピュータ業界との関わりも深い。米IDCと合弁会社を設立しコンピュータ専門紙を発行。情報通信分野の強化に取り組んできた。

 オーディオをはじめ、レコード業界との関係の深さも特徴だ。77(昭和52)年には米ビルボード社と提携。

 電波新聞関係会社のミュージック・ラボに資本参加し情報発信を開始、エンターテインメント関連の報道には長年力を入れてきた。

 今、インターネット時代の新しいエンターテインメントが勃興する中で、再びエンターテインメント分野の報道に注力し始めている。

時代に合わせ変わる紙面を提供

 電波新聞のグローバルな視点と業界に根差した報道、業界に役立つ情報を提供するDNAは今も受け継がれている。

 18年4月に紙面刷新した際には読みやすさを重視し専門紙では珍しい大きな字体を採用するとともに、家電流通や地域の情報発信にも注力。

 地域発の企画記事などを増やした。最終面には電機業界がハブとなり成長が期待されるモビリティやヘルスケア、ロボティクスなどの専門ページを新設し日替わりで報道を始めている。

 海外との連携も進む。海外展示会などの取材を継続し、現地に報道記者を送りどのメディアよりも詳細な現地報道を続けている。韓国や台湾政府との連携にも取り組み企業誘致やマッチングなども進めてきている。

業界をつなぐハブとして支援

 70周年の節目となった20年は、新型コロナの世界流行という歴史的な転換期になっている。

 ニューノーマルの世界ではエレクトロニクス業界の技術が今まで以上に求められる。クラウドやAI(人工知能)、IoTといったデジタル技術の活用をはじめ、感染防止に役立つタッチレスには各種センサーや認証技術が欠かせない。

 全てがつながる時代になれば、ネットワークとコンピュータが必要となり、あらゆる産業をつなぐ中核がエレクトロニクス産業になることは間違いない。

 電波新聞社はこれからもエレクトロニクス業界のハブとなり発展に向けた支援をしていく。