2020.09.30 【電波新聞70周年特集】家電流通非家電商品を強化へ

家電量販店は、非家電商品の取り扱いを拡充するなどで、社会環境の変化に対応できる体制を整えていく

リフォーム提案など非家電の取り組みを強化し、地域店も持続的な成長を目指しているリフォーム提案など非家電の取り組みを強化し、地域店も持続的な成長を目指している

量販店 〝最適解〟で勝ち残りめざす

 新型コロナウイルスの流行で、家電量販店が「生活基盤」としての存在感をいっそう強めている。

 訪問型の地域電器店もこれまでのような活動が難しくなる中、独自の工夫でお客とのつながりを強めている。

 国内の家電市場が年間約7兆円規模でほぼ変わらない中、少子高齢化といった社会構造の変化も受けて、この10年で量販店各社は家電以外の領域にも事業を拡大してきた。

 コロナ禍は、さらなる事業戦略の修正や見直しを求めつつあり、都市型や郊外型、それぞれの店舗形態とネット戦略に「最適解」を出した量販店が、これからの時代を勝ち残っていくはずだ。

 現在、家電流通市場では大手7社が存在感を発揮している。各社はそれぞれ、家電を軸にした独自の戦略を推進している。

 その中で目立ってきたのが、非家電商品の強化だ。それを最も強力に推し進めているのが、最大手のヤマダ電機だ。

 ヤマダは11年に住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収したのを皮切りに、住設機器メーカー・ハウステックやリフォーム事業を展開するナカヤマなど次々と買収。19年末には家具販売の大塚家具も傘下に収めた。

 ヤマダは、住空間全体の提案を一つの店舗で完結できる体制を整えるため、住空間関連の企業買収を進めるとともに、店舗の改装や構造改革を進めてきた。

 その成果もあって19年度には増収増益を達成。これまでは赤字企業の買収を中心としてきたが、9月には、業績が堅調な住宅メーカーのヒノキヤグループのTOB(株式公開買い付け)を発表するなど、攻めのM&A(合併・買収)へと転じ始めている。

 ヤマダをはじめ、ビックカメラやヨドバシカメラのカメラ系2社、エディオン、上新電機などは、日用雑貨やおもちゃ、自転車など様々な商材を扱うようになった。ノジマも金融事業との連携を進めるなど、独自の路線で事業の多角化を目指している。

 ケーズホールディングスだけは、家電販売を軸にした戦略を基本的には崩していないが、20年度から小学校で必修化されたプログラミング教育への対応を視野に、店舗でプログラミング教室を開催するなど教育事業にも力を入れている。

 非家電商材の取り扱い拡大やネット通販の強化、店舗を生かした新事業など、家電販売以外の分野を収益源に育てようとする動きは業界におけるここ数年の大きな流れになっている。

 そうした中、新型コロナの流行で社会環境が急変。在宅勤務の定着や外出自粛による巣ごもり消費をもたらし、人の動き方も変化した。

 これまで量販店では、都市型店舗が立地と集客力で強みを発揮してきたが、人の流れが変わったことで、自宅近くの郊外型店舗を利用する人が急増。ケーズやコジマなど、郊外型を中心に展開する量販店の業績を押し上げた。

 逆に苦戦しているのが、都市型を多く抱えるビックやヨドバシ。ヤマダも都市型と郊外型を展開しており、都市型の苦戦が目立つ状況だ。

 こうした状況の急変もあり、カメラ系2社が相次いで社長を交代。新たな体制で収益力の向上や、ネット通販戦略の加速を打ち出している。ヤマダも都市型店舗の再編や改装に乗り出し、ニューノーマル(新しい日常)への対応を急ぐ。

 コロナ禍はネット通販の利用も促進した。巣ごもりが利用を加速し、人々の生活にネット通販がいっそう浸透し始めている。

 多彩な商材の取り扱いも大事だが、リアル店舗を持つ強みをネット戦略に生かすことが、量販店にとってはアマゾンといったEコマース事業者との差別化につながる。

地域店 ニューノーマル意識した活動

 少子高齢化が進む国内市場は、コロナ禍がネット利用を促進したとはいえ、シニア層の一部ではネットをうまく活用できない世代がいるのも事実。量販店は郊外型で地域密着のサービスに取り組むが、密着度では地域店が強みを発揮する。

 地域店はコロナによって訪問活動の自粛を余儀なくされたが、そうした中でも電話やはがきなど、コンスタントにお客とつながる活動を続けてきた。

 年々数を減らす地域店ではあるが、ここまで生き残ってきたのは〝勝ち組〟にほかならない。

 徹底したお客訪問や定期的なイベントの開催、顧客管理などに加え、リフォームといった住空間全体を提案する方向性に地域店もかじを切っている。

 買い替え需要が基本の家電では、事業の拡大が見込みにくく、地域店もリフォームをはじめとした新たな取り組みを進めている。

 新型コロナと共存するウィズコロナ時代で、人との接触が減ってしまったシニア層は、逆に付き合いのある地域店を頼りにするなど、これまで培ってきたものがより生きつつある。

 コロナ禍をきっかけに、合展の在り方が今後見直される可能性もある。集合催事がなくてもお客との関係を切らさないようにするには、お客との新たな向き合い方も求められるだろう。

 地域店にとってもこれまでと違った視点で臨む必要があり、ニューノーマル(新しい日常)を意識した活動への移行が、これからの時代では重要だ。