2020.09.30 【電波新聞70周年特集】作家・歌手川中美幸若手育て演歌の血つなげたい

 電波新聞社創立70周年おめでとうございます。素晴らしく、すごいことだと思います。

 私もテイチクエンタテインメントからデビューして来年で45周年。感慨深いものがあります。70周年の記念の年に新聞に登場させてもらえることは、とても光栄なことです。

 好きな道で食べていけることがどれだけ幸せなことか、このコロナ禍で改めて感じました。

 今後、仕事が以前のようにできるようになれば、私の歌が変化していると思います。言葉の一つ一つ、歌の歌詞の一字一句が深いものになっていると思います。

 人情の街・大阪で育った私ですが、このコロナ禍で人に対する思いや歌に対する思いが大きく変わったように思います。

 早く私の歌を聴きたいとファンの方から手紙を頂きます。私の歌でも喜んでもらえると感じました。

 ステイホーム中に、自分の人生を振り返ることができる時間がありました。洋裁教室に1年通っていたことを生かし、マスクを500枚作りました。

 マスクを差し上げる時に皆が笑顔になってほしいとの思いでつくりました。私はものづくりも、人の笑顔を見るのも好きです。

 それはステージでも同じ。楽しくなって、ものをつくるという意味では、芝居や歌も同じことですよね。

 テレワークなど、PCでのやりとりが多くなりました。一方で人は会わなければ、ぬくもりを感じることはできません。生の歌を聴いてもらえるように早く収束してほしいですね。

 新曲が発売されるたびに、電波新聞で掲載していただいています。電波新聞の古くからの記者の方が必ず発表会に来て、その世代の人は自分の歴史も知ってくれています。

 同じ時代を生きた人がいるとうれしいし、同志がいるとホッとします。取材中では人となりを感じてもらい、記事を見ると愛を感じます。

 応援してもらっていると感じスクラップ記事が多くなります。今後も応援してほしいです。

 2月には新曲「海峡雪しぐれ」をリリースしました。「海峡モノ」は初めて。愛する人を胸に抱きしめながら、強く生きていこうとする女性が主人公です。

 最近の私の歌では久しぶりのマイナー調のしっとり、かつドラマチックな演歌でカラオケファンの人も歌い切ったと実感できると思います。

2月にリリースした新曲「海峡雪しぐれ」が好評

 CWの「雨の止まり木」もマイナー調のセリフ入り演歌。マイナー調は今だからしみじみと歌えます。

 苦しいときには、マイナー調の演歌が良いと思います。

 自分の人生を振り返ると苦しい時こそ、マイナー調の歌を聴いていました。励ましにつながり、頑張っていけます。

 一方、4月には前川清さんとのデュエット曲「東京シティ・セレナーデ」をリリースしました。

 都会的なおしゃれな男と女の楽曲。コンサートでも2人で歌いましたが、非常に良い歌です。CWは「ヘイ・ポーラ」。洋楽を2人でカバーしました。

 今月18日には、名古屋でその前川さんとステージをともにしました。7カ月ぶりの大きなステージで「爆笑トーク」と「ヒット曲」「感動曲」のオンパレードでした。今の時代は笑いも必要だと思います。

 今月中旬には、日本メンズファッション協会が主催する「グッドエイジングキャンペーン」の「グッドエイジャー賞」を頂きました。

 年齢を重ねても人生を楽しみ、常に未来を見つめ、これから先もいろいろなことに挑戦する方々に贈られる賞です。

 44年間、歌わせてもらって、年齢を重ねこのような賞を頂け光栄です。同年代にエールを送れるようにしたいです。

 年齢を重ねると深さが出てきます。自分の顔も毎日何かが変わっています。父に似ているといわれますが、最近は素顔になって鏡を見ると、母に見えてくることもあります。今は年を重ねることが楽しみです。

 新しいことで言えば昨年、初めて落語に挑戦しました。

 今年の2月には明治座で落語を披露させてもらいました。人生無駄なことはないと実感しました。

 来年45年を迎えますが「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」と勢いをつけて、前向きに取り組みたいですね。生き方としても、新しいことに挑戦していきたいです。

 最近は、所属するテイチクエンタテインメントでも、若手がデビューしています。長年お世話になっているテイチクエンタテインメントに、どうやって恩返ししたらよいか考えていました。

 ひと昔前は歌える場がありましたが、今はコロナの状況も含めて少ないように感じます。新人を盛り上げるために歌えるきっかけをつくるとともに若い人を育てて、演歌・歌謡曲の血をつなげたいです。

 今だから強く感じています。新しい生活様式の時代のライブの在り方もあります。1人芝居、女の一生ものもやってみたいです。

 今取り組むべきことは身体を鍛えること。そして、歌い続けること。コロナの状況でも歌はなくなりません。音楽は必要です。私も70周年まで頑張ります。

 川中美幸(かわなか・みゆき) 大阪府吹田市出身。ヒット曲に「ふたり酒」「二輪草」など。