2020.09.30 【電波新聞70周年特集】家電暮らしに寄り添うモノづくり、〝つながる〟ことで新たな需要

サービス・ソリューション一体となった家電提案が市場に新たな活路を開く

家電業界では、少子高齢化や人口減少を背景に、今後大きな需要の伸びを見込むことが難しい中、いかに活路を開くかが課題となっている。

 新たな需要をどう創造していくか、今までの常識が通用しないニューノーマル時代のビジネスモデルの構築が求められる。

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、その意味で家電業界にとって大きな転機をもたらしたといえる。

 家電業界への影響は甚大だったものの、マイナス面ばかりではない。既存の商品であっても、あらためてその価値が見直され、需要を伸ばした商品も多かった。

 また新たな方向性として、インターネットとつながる家電、サービス一体型のソリューションビジネスの展開など、今までにない価値を生み出すビジネスモデルの普及も進む。

 既存商品の活性化

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、人々の生活に大きな変化を生み出し、いわゆる〝巣ごもり需要〟の拡大をもたらした。在宅時間の増加は、家事の増加を引き起こしたことから、家事負担軽減に対するニーズが高まった。

 これにより時短など家事軽減につながる機能・特徴を持つ多くの家電が注目されるようになった。調理家電では、主力の炊飯器やオーブンレンジを含め、コロナ禍で好調な商品が続出している。

 ホットプレートやジャーポット、ホームベーカリや自動調理鍋、冷蔵庫など幅広い商品が伸長。

 調理家電では、時短調理や自動調理といった、家事の手間を省いて、ゆとり時間を生むための機能開発に力点が置かれ、コロナ禍において、こうした商品戦略がユーザーニーズに一層マッチした。

 「巣ごもり需要の好調だけで終わらせないよう、暮らしに寄り添い、食文化・食生活向上につながるモノづくりを目指す」(パナソニック アプライアンス社キッチン空間事業部・捧雅之調理機器ビジネスユニット長)など、中長期的な商品戦略にも力が入る。

 また、健康や清潔に関わる製品へのニーズが一気に高まっており、掃除機にも関心が集まった。

 在宅時間が増えたことで掃除に関する意識・状況が変わり、室内の汚れが目につくようになって掃除回数が増えた、というユーザーが多い。

 このため、サッと掃除しやすいコードレススティック掃除機や、家事負担を大きく軽減するロボット掃除機が注目されている。

 さらに健康志向を背景に、空気清浄機や除菌・脱臭専用機など、空気質の向上に関連する商品も好調な推移を示す。

 これら白物家電のほか、新型コロナで在宅時間が伸びたことからテレビの視聴時間が増えたというユーザーも多く、4K・8Kなど高画質テレビへの関心も高い。

 Android対応テレビが増えており、インターネット動画を楽しむユーザーの関心も引きつける。

 「新たな生活様式の中でも音声と映像による臨場感をご自宅で楽しんでいただきたい。大型高精細テレビ(8K、4K)に加え、BDレコーダ、シアターバーシステムといったAV商品群による新たな用途提案を通じて、新規需要の創造に積極的に取り組んでいく」とシャープ・喜多村和洋TVシステム事業本部長は話す。

 今までにない暮らしの価値を提供

 新型コロナウイルス感染症の拡大で在宅時間が増えたことをきっかけに、家電が〝つながる〟ことの利便性も見直された。

 例えば、調理家電と食材キット宅配サービスなど、商品とサービスが一体となって今までにない暮らしの価値を提供し、新たな需要を創出した。

 家電のIoT化が本格的に始まったのは17年ごろ。昨年から今年にかけて普及が加速し始めた。

 先行するシャープでは、19年度に、既に販売する家電製品の50%が無線LAN搭載のいわゆる〝AIoT〟家電になっており、計画をほぼ1年前倒しで進捗している。

 シャープによると、Wi-Fi接続率が高い商品はテレビで、直近では8割までに高まったという。「テレビをAIoT家電の中心と位置付け、スマホアプリと連携してさらにサービスを拡充していく」(喜多村本部長)考えだ。

 ヘルシオホットクックも7割に上り、ユーザーは積極的にネットワークにつなげて家電を利用している。

 各社ではIoT家電のラインアップを強化しており、ルームエアコンをはじめ空気清浄機、洗濯機、冷蔵庫、ロボット掃除機、オーブンレンジ、IHクッキングヒーターなど多彩なIoT家電が登場する。

 今後、より便利にアプリを改善し、購入された後も顧客に寄り添い、暮らしをサポートするサービス・ソリューション提案を各社は加速させる。

 「ウィズコロナで社会が変化する中、従来とは異なるサービスや製品を提供していくことが重要だ」と日立グローバルライフソリューションズの谷口潤取締役社長は語る。

 新型コロナを契機に、暮らしに寄り添う家電製品は、サービス・ソリューションが一体となった新たな需要創造に一つの活路を見いだしていくことになりそうだ。