2020.10.02 【5Gがくる】<13>コロナで見えてきた5Gによる遠隔教育②

 コロナ禍のテレワークと遠隔教育は、ニューノーマル(新しい日常)社会の実証実験になったと言っても過言ではないだろう。情報通信の観点では、現ICT(情報通信技術)システムで大丈夫なのか、何が問題なのか、何が足りないのか--を明らかにする実験、言い換えれば「5G」の必要性を証明する実験であったのは間違いない。以下、遠隔教育の実験結果を検証してみよう。

デジタル教材は好評

 大学では学習管理システム(LMS)の導入が徐々に進んでいるが、それにしてもいきなり全ての授業を原則オンラインで実施したのは前代未聞だった。それゆえ、教育現場からは教師・学生双方で四苦八苦している状況が漏れ聞こえてきた。

 たとえば、文系の教師がスマートフォンで自撮りしたり、音声を録音したり、見様見まねでデジタル教材を作成し、徹夜の突貫工事で配信にこぎ着けたという話は枚挙にいとまがない。

 一方、学生の反応はどうだったのか?

 国際基督教大学の「春学期オンライン授業に関する学生アンケートまとめ」より一部を引用しながら分析してみたい。

 アンケートによるとオンライン授業の良い点として、オンデマンドのデジタル教材は場所と時間に縛られないゆえ「自分のペースで効率良く学べる」と答えた学生が大半を占めた。ほかの大学でも、おおむね対面授業に比べて受講率と理解度が高い。

 これは、前回述べた反転学習・前工程の「効率化」指標が裏付けられたと考えてよいだろう。半面、悪い点では「目が疲れる」に続いて「ディスカッションがやりにくい」が大半を占めた。つまり、反転学習・後工程の「アクティブ化」指標がオンラインではうまくいっていないということになる。

 それには二つの理由があるように思う。一つは「Webex」や「Zoom」といったビデオ通話や、オンライン会議などのツールに慣れていないのだろう。講義型に比べ、グループ・ディスカッション型は慣れるまで時間がかかる。もう一つはアンケート回答でも多かった「ネットワーク環境によって学修の質が左右される」ことで、「通信帯域不足の問題」も課題になっているということだ。

 家族や集合住宅の居住者がテレワークをやっている場合には、光回線の帯域をシェアするため、なおさらだ。

 たとえば、ツール使用時のルールとしてよくある「発言しないときはマイクをミュート」や「カメラはオフ」は、帯域不足による音声や動画の乱れを回避するための苦肉の策。

ニューノーマルな教育「反転学習」

帯域不足を解消

 そのため、発言する際にマイクが入っていないとか、参加メンバーの顔が見えないとか、議論しにくいのは当然だ。この通信帯域不足(低速)を解消するのが5Gだといえる。1対1のディスカッションでも、下り1.5メガbps前後の帯域が必要で、人数が増えるとそれに比例した帯域が必要だ。その点、下り1ギガbps以上の実効速度が出る5Gであれば十分にストレスなく遠隔授業ができるといえる。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉