2020.10.07 変動する再エネ発電、予測情報の提供サービス強化日本気象協会、精度高める工夫も
日射量・太陽光発電出力予測APIの利用イメージ
太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの全国的な広がりを受けて、日本気象協会(東京都豊島区)が、新電力や発電事業者などを支援する情報提供サービスの強化を進めている。多くの再エネは気象状況によって発電量が大幅に変動することが特徴で、発電出力などの予測精度を高めることが、エネルギーマネジメントの要だ。気象予報を調査、分析するノウハウを生かして情報提供し、再エネ普及の後押しをする。
同協会は、300人を超える気象予報士を抱え、コンサルティングなども手掛ける民間の気象会社。11年の東日本大震災以降、国内での再エネの普及に伴って、気象に関わる情報提供分野などでサービス拡大に乗り出している。
その過程で独自に開発したのが、日射量や太陽光発電出力予測に特化した気象モデル「SYNFOS(シンフォス)-solar」だ。全国の日射量の観測データを活用するなどして精度を高め、1キロメートル四方単位で予測ができる。
このモデルをベースに、今回、新たに活用しやすい仕組みで提供を始めたのが、「日射量・太陽光発電出力予測API」だ。従来は、提供データの分析や活用などに専門職員が必要だったが、外部システムとの連携を容易にすることで、一般的な事業者でも利用しやすい仕組みに変えた。
再エネの電力を多く扱う新電力などでは、気象条件に発電量が大きく影響を受けるため、発電量の予測が重要になる。
新たなサービスでは、全国どの地域でも日差しの量や日照時間などを推定し、それに基づく発電出力を78時間先まで30分単位で予測。1日3時間ごと計8回更新する。
利用者は、設置した太陽光発電設備の位置情報を、郵便番号や緯度経度などから設定。発電量に影響する土地の傾斜角度やパネルの設置角度、向きのほか、発電した直流の電気を一般に利用可能な交流に変換するパワーコンディショナの設備情報などを入力すれば、適切な情報を入手できる。
予測精度の向上のため、気象庁などのモデルも組み合わせて活用している。また、気象庁が全国1300カ所設置している観測施設、アメダスなどから日射量のデータなども利用する。
パネルの稼働に影響する台風などの関連する一般的な気象情報の提供も可能。また、パネルの施工作業などを効率的にできるよう気温予測なども提供する。
同協会は「事業者には、これまで勘と経験に頼ってきたパネルの発電量予測を、数値で見える化し、より確実性を増して、ロスなどを少なくしてもらいたい」と期待する。
さらに、電力事業者には欠かせないデータが電力需要の予測だ。同協会が、従来から提供する「電力需要予測サービス」に、今回、新機能を追加した。
気温や湿度、日射量など気象予測データに、人工知能(AI)を組み合わせて2日後までを需要予測するサービスだが、今回、「業種別」と「契約プラン別」で予測できるようにすることで、細かなデータ分析によって精度向上に寄与できるという。
電力は、需要量と供給量をバランスさせなければ、システムトラブルの原因になる。同協会によると、変動性の高い再エネなどを扱う新電力などは、需要の計画値と実績値とに大きな差が出た場合、系統を管理する一般送配電事業者にペナルティとなる料金を支払う義務が生じる。そのため、需要や出力予測の精度は事業上の肝となり、新電力などには重要な経営課題でもあるという。
新たに加えた「業種別」では、需要家を工場、オフィスビル、一般家庭の三つに分類。「契約プラン別」では、主に一般家庭向けの従量電灯、産業用の低圧電力、大規模産業用の業務用電力に分けて、需要変動パターンを分析して電力需要を予測する。これまで以上に細かに分類して予測するため、全体の精度が高まり、既に利用した企業では予測の誤差が最大で4割程度改善する成果も出ているという。
同サービスには20年8月現在で、大手電力や新電力など数十件を超える導入実績があり、予測された電力需要は、コロナ禍の影響で不透明さも増す中、新電力などが顧客である供給先のポートフォリオを最適化するのにも役立てられるという。
同協会は、風力発電設備の設置に必要な環境アセスメントを国内トップシェアで請け負っているという。同協会は「再エネのエネルギーマネジメントは、予測の精度をどこまで高められるかにかかっている。これまで気象にかかわってきた長い蓄積があり、ニーズが高まっている再エネでも、活用していきたい」と話している。