2020.11.06 世界最高水準の超低遅延  ミハル通信、新型8K映像伝送システム開発に注力

開発中の8K HEVCエンコーダ開発中の8K HEVCエンコーダ

4K・8K映像技術展でにぎわうブース4K・8K映像技術展でにぎわうブース

 ミハル通信は、世界最高水準の超低遅延を実現する「新型8K映像伝送システム」の開発に注力している。同社はCATV関連や放送関連などのハードからソフトウエアまで、自社開発の製品・システムを提案し、放送分野に貢献してきた。今回の映像伝送技術の8K映像伝送システムを使って、CATVといった放送以外の様々な産業分野に提案する新規ビジネスとして、展開していく計画だ。

 先日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で行われた「4K・8K映像技術展」で、現在開発中の8K HEVCエンコーダと同社独自に開発したシステムにより、超低遅延を実現する8K映像伝送のデモが披露され、高い関心を集めた。

 同社はこれまで8K映像伝送システムの提案として、8K HEVCエンコーダとISDB-S3変調器の組み合わせで、放送波と同様の変調をかけて8Kテレビに表示させていた。

 今まで放送に対応するARIB標準規格に準拠する製品開発をしていたが、ARIB標準規格では超低遅延の実現は難しい。今回開発した新型8K映像伝送システムは、超低遅延システムを実現するため、デコーダと変調と復調の仕組みを独自開発した。

 同社の尾花毅技術統括本部長は「今まで当社の8Kエンコーダは放送の仕組みそのままだったので遅延時間が長く、3秒以上の遅延が生じていた。それだと遠隔のロボット操作や遠隔の手術など、乱れなく低遅延で送ることが求められる分野には使えない。そのため、エンコーダはファームウエアし、新たにデコーダと変調方式を独自開発した。自社開発のエンコーダとデコーダをセットで工夫することで、遅延を減らすことができた」と話す。

 新システムでは1-2フレームの15-30ミリ秒の遅延しか生じないため、人の目ではほとんど感じられない。ほぼリアルタイムの8K映像を見ながら遠隔地からの操作も可能。今後、医療やスポーツなど様々な用途で超低遅延の映像伝送の活用が期待される。

 同システムに様々な伝送路を組み合わせて、ユーザーのニーズに合わせた最適な映像伝送システムを提案する。「新システムはまだ開発中だ。お客さまの要望やニーズを聞いて新たな機能などを取り入れ、お客さまに最適なシステム構成ができるカスタマイズも可能だ。今までは学校やCATV、競馬場などでの放送だけ利用していたが、今後は医療やセキュリティなど幅広い分野に展開していきたい」と尾花本部長は語る。

 さらに、放送波の変調と独自開発した変調の技術も組み合わせることもできる。例えば、病院で低遅延が必要な手術室とそこまで低遅延が必要でないインターン部屋を分ける使い方で、コストを削減できるメリットもあるという。

 同社は、超高速や超低遅延などを持つ5Gといった伝送方式を組み合わせて最適な映像伝送も提案していく予定。同システムは8K映像の画質をベースバンドの約50分の1まで信号を圧縮。5Gで同システムを使えば、8K映像を伝送することも容易になる。今後5Gと同システムの活用で生み出される新たなサービスへの期待が高まる。