2020.11.12 世界最大の新設バイオマス発電所計画新電力のイーレックスと石油元売りのエネオスが検討

新計画の完成予想イメージ

イーレックスが既に稼働させている福岡県豊前市のバイオマス発電所イーレックスが既に稼働させている福岡県豊前市のバイオマス発電所

大分県佐伯市のバイオマス発電所大分県佐伯市のバイオマス発電所

 新電力大手のイーレックスは、石油元売り最大手のENEOS(エネオス)と共同で、新設としては世界最大となる大型バイオマス発電所の建設計画の検討を進める。設備出力は300MW規模を予定。事業化に向けて検討することで両社が合意し、建設に向けた第一歩として環境アセスメントに着手する。

 イーレックスはバイオマスが主力。高知県や大分県、福岡県などに計4カ所の発電所を運営するほか、21年には沖縄県でも出資する発電所が運転を始める。グループのバイオマス発電量は国内トップクラスで、豊富な知見を有する企業だ。一方、エネオスも20年5月に北海道室蘭市で、初めて主体となってバイオマス発電所の運営を始めるなどしてきた。

 新設計画は、エネオスが所有する新潟県聖籠町のゴルフ場の一部、約40万平方メートルを建設予定地とする。年間発電量は約2000GWhを想定。両社で2-3年程度かかる環境アセスを進めながら、使用する燃料や建物の詳細な設計などを、両社で詰めていくことになるという。

 合意できれば、23年中に着工、26年度の営業運転開始を目指す。地元新潟県の需要家やRE100企業などへの供給を検討しているという。

 今回の計画は、注目を集める点が多い。

 まず、新設するバイオマス発電所としては世界最大となる見込みだ。イーレックスによると、イギリスで出力660MWの石炭火力発電所4基をバイオマス発電所に転換したケースがある。この発電所を除けば、同じくイギリス内で20年度中の稼働を目指して建設中の出力299MWのバイオマス発電所を上回って、最大になるという。

 また、実用のバイオマス発電所としては世界で初めて超々臨界圧と呼ばれる技術を導入する。高圧力でかつ600度の高温の水蒸気を発生させて、タービンを回して高効率で発電する技術で、通常の仕組みよりも、燃料消費量の削減につながる。そのため、普通の火力発電と比べると、年間で100万トン程度の二酸化炭素(CO₂)を削減できる計算になるという。

 さらに、発電した電力は、再エネ固定価格買い取り制度(FIT)を利用せずに売電する計画だ。FITに依存しない小規模のバイオマス発電所はあるが、大型としては国内で唯一という。「FITは国民負担の大きさが指摘されている。CO₂フリー電気として、需要家に直接、売電できる方法を選択した」(イーレックスIR広報室)という。

 また、イーレックスグループの強みの一つである燃料調達でも新たな試みを始める。キビの一種、ソルガムを同グループが独自に発電用の植物燃料として改良した品種をベトナム、フィリピンなどで試験的に栽培を始めた。

 従来の燃料より安価で、生育も早いため、年間2.5-3回収穫できる。バイオマス発電用の燃料は今後、確保が難しくなるとの見通しもあるといい、21年度中に本格的な大規模栽培を始め、燃料の安定供給を支える。

 計画では、燃料として、ソルガムに加えて、ロシアから木くずを固めたペレットなどで年間計120万トンを確保する予定だ。

 イーレックスIR広報室は「再エネの中でも、バイオマスは、太陽光や風力の変動性を補うことができる重要なポジションを占め続ける」と指摘。「FITに依存せず、スケールメリットを生かした大型の発電所の建設を目指すことは意義がある。発電されるCO₂フリー電気をいかに販売していくかも課題だ」と話している。