2020.12.10 首都の玄関にメガソーラーの彩り羽田空港で稼働進む、空港施設など

羽田空港内の施設の屋根などに太陽光パネルの設置が進んでいる

国内貨物ターミナル施設では、10月末から12月にかけて太陽光発電の運用が始まっている国内貨物ターミナル施設では、10月末から12月にかけて太陽光発電の運用が始まっている

太陽光発電設備が設置された地区には、クリーンエネルギーが供給される太陽光発電設備が設置された地区には、クリーンエネルギーが供給される

空港施設が発行したグリーンボンドの仕組み空港施設が発行したグリーンボンドの仕組み

国際貨物ターミナル施設に設置された太陽光パネル(10年時)=東京国際エアカーゴターミナル提供国際貨物ターミナル施設に設置された太陽光パネル(10年時)=東京国際エアカーゴターミナル提供

 首都・東京の空の玄関口、羽田空港内に、「メガソーラー」が彩り始めている。国内貨物ターミナル施設を管理する空港施設(東京都大田区)が12月上旬までに、メガワット級の太陽光発電設備の稼働を始めた。既に、国際貨物ターミナル施設などでも設置されており、羽田空港が目指す「エコエアポート」の具体化が進む。

 今回、稼働を始めたのが、空港内北側にある国内線の航空貨物ターミナル施設。空輸する航空便の荷物の送り先の仕分けなどをする場所で、そのうち2棟の屋根上計約6400平方メートルに、パネル約2800枚を敷いた。年間発電量は計約119万5000kWhで、一般家庭約270世帯分に相当するという。「自家消費できる分だけのパネルを敷いた」(空港施設・経営企画部)形だ。

 発電した電気は地区内に供給。全国に空輸する食品などを一時的に保存する大型冷蔵庫や、コンベヤーで宅配荷物などを送り先別に自動仕分けできる装置などが、日夜稼働しており、こうした設備の電気を賄っていく計画。

 同社は、設置資金の一部をねん出するため、環境問題解決に貢献する事業に使途を絞ったグリーンボンド(環境債)を発行。同社初の取り組みで、1億円程度の資金を集めたという。

 空港ならではの困難さ

 ただ、公共性の高い空港での設置には難しさもあった。

 羽田は、国内各地に空路を結ぶ物流の一大拠点。24時間運用するため、働く人に迷惑をかけずに発電設備を設置しなくてはならない。同社によると、設置のために1年ほどの計画期間を経て、20年7月に着工。12月上旬にようやく全体の設置を終え、稼働を始めた。「利用する顧客とも調整しながら作業を進めた」(同)という。

 多くの飛行機が発着する羽田では運航に支障が出ない配慮も不可欠だ。

 太陽光パネルは、日当たりが良い場所に設置されている分、パネルが反射した光が、近くの上空を飛行するパイロットの目に入ることも懸念された。そのため、パネルの素材や色合いなどを工夫し、光を反射しにくくしているという。

 10年10月の羽田の再国際化に合わせて、空港の南側に開設した国際貨物ターミナル施設の屋根には当初から、国内の他空港に先駆けて太陽光パネル約1万4000枚を据え付けている。最大2000kWhの発電が可能で、施設内の照明といった電力使用の10%程度を賄い続けてきた。運営する東京国際エアカーゴターミナル(東京都大田区)業務部の担当者は、「夏場は消費電力をカバーできる分も多い。空港での取り組みでもあり、海外からの視察なども多かった」と話す。

 各地の空港で広がりも

 空港施設は、羽田や伊丹など全国主要な12空港で必要な施設の建設、管理などを手掛ける一方で、13年に売電を中心とした太陽光発電事業に参入。千葉県成田市の成田空港周辺の遊休地に野立ての発電設備(年間発電量約80万kWh)を設置したのを皮切りに、14年に鹿児島空港内の格納庫や倉庫(同約30万kWh)などを稼働。

 さらに、18年には羽田近くの大田区平和島の物流倉庫屋根上に、東京23区内で有数の規模を誇る同約250万kWhの設備を設置するなど、積極的に取り組んできた経緯があり、今回、主力の羽田内でも稼働を決めた。同社は、羽田を含めた5カ所での発電で、計約3130トンの二酸化炭素(CO₂)削減効果があると試算する。

 同社経営企画部は「各地の空港でも太陽光設備の導入は進んでいる。当社もさらなる導入を検討していく」と話している。