2020.12.25 【電波時評】コロナ禍における製造業のイノベーション

 今年はコロナ禍で、ものづくりにも様々なイノベーションが起きた。「故障予知」もその一つと言える。

 製造現場で「チョコ停」「ドカ停」と呼ばれる操業中の生産ライン停止は大きな損失につながる。生産設備の状態を監視することで、異常をより早く検知し、事前に修理する「故障予知」「予防保全」が注目され、この分野に様々な企業が参入した。

 故障を予知することで、従来は現場作業者の経験と感覚による確認・判断に頼っていた装置の保全作業に計画性を持たせることができ、設備稼働率を高められる。

 「故障予知」の方法として、モーターの振動や音のセンシングデータの解析や、直動案内機器など機械要素部品の振動解析、AE(アコースティックエミッション=物体が壊れる時に発する弾性波)の応用など、様々な方法がある。センシングデータを無線で飛ばし、遠隔監視することで、人との接触を避けることができる。

 日本精工は、設備や製造ラインの予防保全を今後の成長分野のコンディション・モニタリング・システム(CMS)事業と位置付け、同事業をグローバル展開する英国企業を約211億円で買収した。

 THKは、LMガイドやボールねじなどにセンサーを取り付け、収集したデータを独自のアルゴリズムによって解析することで状態診断、予兆検知を実現するIoTサービスの本格的な運用を始めた。

 コロナ禍で設備投資が抑えられ、特に日本では工場新設など大型案件は少なく、また工場全体、生産ライン全体をスマート化するにはコストがかかり、投資は慎重だ。

 製造工程の一部をIoT化する「故障予知」が、スマートファクトリーの本格的な普及の足がかりになれば、との期待もある。(虹)