2020.12.28 Let’s スタートアップ!プレシャスパートナーズ「雇用のミスマッチをなくしたい」採用課題を解決する総合人材サービスで躍進!

 成長が著しいスタートアップ企業を取材し、新しいビジネスの息吹や事業のヒントを探る「Let’s スタートアップ!」。

 今回は、2008年に設立した総合人材サービス企業プレシャスパートナーズ。「雇用のミスマッチをなくす」というミッションを掲げ、求人広告代理事業や社長インタビューを掲載する就職支援サイト「アールエイチナビ」の運営などで、堅調な成長を続けている。

 設立の経緯や狙い、組織が成長していく中で抱えた課題とその解決策など、広報責任者の北野由佳理さんに聞いた。

プロフィール 北野由佳理(きたの・ゆかり)・プレシャスパートナーズ執行役員CMO・経営戦略室室長
大学卒業後、2013年に新卒でプレシャスパートナーズに入社。採用コンサルティング営業を経験した後、2017年4月に広報部を立ち上げる。2020年、執行役員に就任。現在は、経営戦略と広報部門の責任者を務めている。

「雇用のミスマッチをなくす」ために

 新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は3割以上——。これは、厚生労働省が2020年10月に発表した「新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)」に掲載された統計データだ。

 こうした状況が発生する背景には、働き方に対する価値観の変化があるだろう。しかし、実際の業務に対して企業と就業者が抱くイメージのギャップも大きな要因の一つに挙げられるのではないだろうか。

 こうした雇用のミスマッチをなくすことをミッションに掲げ、総合人材サービスを提供しているのがプレシャスパートナーズだ。

 バイトルやマイナビ、マイナビ新卒といった求人媒体の中から、企業のニーズに合った求人広告を提供する「求人広告事業」のほか、企業と求職者をマッチングする「人財紹介事業」、採用ツールの制作を支援する「採用ブランディング事業」、就職支援サイト「アールエイチナビ」の運営などを手掛けている。

 そのコンセプトが最も顕著に表れているのが「アールエイチナビ」だ。これは、中小・ベンチャー企業の社長や経営者にインタビューを行い、その考え方や社風を紹介する就職支援メディアとなっている。企業の良い面だけでなく、課題も紹介することで、雇用のミスマッチング削減につなげている。

 「アールエイチナビ」には、学生と社長や経営者との出会いの場を提供する狙いもある。学生が「会いたいボタン」を押すことで、社長や経営者と直接話せる機会が提供される仕組みが設けられているほか、2019年からはベンチャー企業の社長や経営者と学生が集まる就活イベント「リクルートオーディション」(現在はリモートも実施)も定期的に開催している。

「誰と働くか」にフォーカスした就職支援サイト「アールエイチナビ」。現在200社以上のインタビューを掲載
学生が中小・ベンチャー企業の社長や経営者と直接会える就活イベント「リクルートオーディション」
(※現在はオンラインを中心に行っている)

創設当初から抱いていた思い

「雇用のミスマッチをなくす」というコンセプトは、代表の髙﨑誠司氏が設立当初から抱いていたと北野さんはいう。

 代表の髙﨑は、もともと求人情報サイトの「バイトル」を運営しているディップの出身です。

 当時髙﨑は広告代理事業の営業をしていました。初めはなかなか結果が出せず苦労したようですが、徐々に大きな成果を上げられるようになっていきました。

 しかし自社で広告媒体を運営している企業の場合、お客さまに紹介できるのは、自社の媒体に限られてしまいます。

 もちろんバイトル自体は良い求人媒体ですが、お客さまの採用の課題を解決できるかどうかを考えたときには、バイトルが良いときもあれば、そうじゃないときもあります。

 髙﨑はその頃から、「採用の課題を解決したい」「雇用のミスマッチをなくしたい」といった思いを抱いていました。

 そこで、自分で起業していろいろな広告媒体を扱うことで、お客さまの本当の課題を解決したいという思いが徐々に強くなり、2008年4月にプレシャスパートナーズを起業したという流れになります。

 現在当社の求人広告の代理事業は13年目を迎えていますが、全国で80ほどの求人媒体を取り扱うようになり、お客さまのニーズに合った求人広告を提案しています。

プレシャスパートナーズが最初に始めたのが求人広告の代理事業だと話す北野さん

中小企業では「誰と働くか」が重要

 主力事業の一つである「アールエイチナビ」の誕生には、プレシャスパートナーズが抱えていた新卒採用の課題が関係しているという。

 当社のサービスモデルが変わるきっかけとなった出来事が2015年頃に起きました。

 毎年新卒採用をしていたのですが、1年目でその50%ほどが辞めてしまった時期があったのです。

 そのときに髙﨑は、ベンチャー企業である私たちがこれだけ悩むということは、中小・ベンチャー企業である当社のお客さまも同じような悩みを抱えているに違いないと考えました。

 辞めなかった新入社員たちに、なぜ残ってくれたのか聞くと、「社長のために働きたい」「社長のために頑張りたい」といった答えが多く返ってきました。

 これを聞いた髙﨑は、中小・ベンチャー企業の社員にとっては、「誰と働くか」が重要で、さらに中小・ベンチャー企業においては、「その誰か」が「社長」である場合が多いと気付いたのです。

 そこで当社では、社長や経営者の思いを発信するためのインタビューサイト「アールエイチナビ」を開設しました。

 一般に求人広告の目的は、企業の業績や福利厚生の“見える化”を目指します。一方「アールエイチナビ」はどちらかというと、社長や経営者の思いや社風を“見える化”する媒体ということになります。

 近年、採用現場でよく使われるキーワードに「リアリスティック(Realistic)ジョブ(Job)プレビュー(Preview)」、訳して「RJP」という言葉があります。

 これは直訳すると「現実的な仕事情報の事前開示」という意味で、その企業のマイナスの情報も含めたありのままの情報を提供することを言います。

 私たちは「雇用のミスマッチをなくす」という観点から、この姿勢がすごく大事だと考えていて、「アールエイチナビ」ではトップ自らに自社の課題も語ってもらうようにしています。

 すると志望する学生さんたちは、「この企業は創業したばかりのベンチャーで、こういう課題がある」などその企業の課題を理解した上で入社できるため、雇用のミスマッチを減らせると考えています。

「アールエイチナビ」の開設をきっかけに、採用ブランディング事業や採用支援事業など、さまざまな事業モデルが生まれたという

不満を持つ社員をあえて「業務改善チーム」に加える

 ベンチャー企業が成長していく中で、組織作りや社員の教育で“壁”に当たるケースが多い。プレシャスパートナーズも組織が拡大する際にも様々な苦労があったという。

 成長していけばしていくほど、毎年必ず課題が出てきました。

 特に2012年から2016年頃まで、30人から50人、70人へと人が増えていく中で、社員の教育や組織作りに苦労しました。

 中間管理職向けの研修や一般社員向けの研修を自社で作るなど、私たちなりにいろいろな試みをしてきましたが、特に大きな効果があったのは、2017年に行った「業務改善チーム」の発足です。

 これは、新卒1年目の社員から社長までが参加するもので、会社が抱える課題を洗い出し、その解決を促すチームです。

 これができたきっかけが、2016年に新卒入社した社員たちでした。彼らの中に「残業が多過ぎる」「美容院やネイルに行きたいのに、会社終わる時間が遅い」などの不満の声を上げる社員たちがいたのです。

 その声を聞いた髙﨑が「業務改善チームを作ろう」と言いだしました。チームには、あえて会社を好きな社員だけじゃなく、会社に対して不安や不満を感じている社員をジョインさせました。

 チームのミーティングでは、その入社1年目の社員たちが不満に感じていることをいろいろと挙げていき、社長もその場にいて、その改善策を一緒に議論していきました。

 すると、当初不満や不平を言っていた社員たちの姿勢がどんどん変化しました。発言内容が「愚痴」から「意見」に変わり、会社を良くするために積極的に取り組むようになったのです。

 こうした成果が出たこともあり、業務改善チームはメンバーを変えながら、毎年募集するようになりました。今年はコロナ禍でなかなか出社できなかった2020年新卒入社の社員たちが、会社に貢献したいと全員が参加を申し出てくれています。

 ちなみに、2017年のチームに参加し、会社に対する不平や不満を言っていた社員は、今ではトップ営業マンに成長し、成績優秀者に贈られる「MVP賞」を受賞するまでになりました。

北野さん自身も「業務改善チーム」に開始当初から参加している

昇進は「自己申告制」

 プレシャスパートナーズでは、社員のモチベーションアップやエンゲージメント向上などを目的に様々な制度が設けられている。

 あまり他社では見かけないのが「昇進試験制度」です。

 これは、社員が「課長になりたい」「部長になりたい」など自分で手を挙げ昇進試験を受けるというもの。一般に昇進は、周りの人からの評価があって行われるものだと思いますが、当社では自己申告制になっているのです。

 試験では上長や役員と面談するため、会社の展望や理念をより深く知るきっかけになりますし、若手社員にとっては早期キャリアアップを目指せるメリットもあります。

 髙﨑が常々言っているのは、私たちは企業の採用のお手伝いをする会社なので、自社でこうした制度を整えていく必要があるということです。そうでないとお客さまに良いアドバイスができませんから。

 自社でいろいろ試し、成功した取り組みをお客さまに紹介することもあります。

さまざまな制度が掲載されているプレシャスパートナーズの採用パンフレット

「採用支援」から「事業支援」の会社へ

 今後プレシャスパートナーズではどのような展望を抱いているだろうか。

 今年当社では、コロナ禍で被害を受けた飲食店を支援するためのテイクアウト情報サイト「ハピテク」を開設したほか、中小企業のデジタル技術活用(DX)を支援するプレシャステクノロジーズを設立しました。

 つまり、これまでは中小企業の「採用支援」に軸足を置いていたのを、今後は中小企業の「事業支援」を行う会社にしていこうと考えているのです。

 そうした中で、今必要なものを尋ねると、北野さんから「アイデアを形にできる人」という答えが返ってきた。

 必要なものはたくさんありますが、あえて一つに絞ると「アイデアを形にできる人」ということになります。

 当社はベンチャー企業として、新しい発想をどんどん出していける人、そして、それを形にできる人を求めています。

 今後、中小企業の事業支援をしていく会社に変わろうとしている時期だからこそ、こういった力を持つ人との出会いを求めています。

(取材・写真:庄司健一)
社名
株式会社プレシャスパートナーズ
URL
https://www.p-partners.co.jp
代表者
代表取締役社長 CEO 髙﨑誠司
本社所在地
東京都新宿区西新宿1-22-2 新宿サンエービル12階
設立
2008年4月
資本金
3000万円
従業員数
105人(2020年11月時点)
事業内容
採用コンサルティング事業・求人広告事業・人財紹介事業・就活イベント事業・飲食店支援事業