2021.01.08 【製造技術総合特集】最新技術動向FUJI デジタルツインによるスマートファクトリー

部品準備まで含めた自動化実現 DXで生産現場サポート

はじめに

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は生産現場においても、しばらくはソーシャルディスタンスを守り、最少人数での作業が求められると考えられ、工場内の自動化への関心は、より一層高まると予想される。FUJI Smart Factoryの自動化・デジタル化により、デジタルツインを実現し、バーチャルとリアルのギャップゼロを実現する取り組みを紹介する。

バーチャルとリアルのギャップゼロを実現

 「シミュレーションによる構成提案」

 生産現場の自動化を推進する際の課題は、自動化すべきボトルネック工程の特定と自動化機器の選定である。これらは、導入効果が薄くなってしまうリスクを回避するため、事前の確認が重要となる。そこで、シミュレーション技術の活用が有効となる。シミュレーションでは、既存のSMTフロアをバーチャル空間に再現。リアルでは数値化が難しかった人間の作業負荷を考慮することで、SMTフロアのボトルネックを可視化する。また、自動化機器を導入した場合やオペレーションを変更した場合の効果の可視化が可能になる。

 バーチャル空間でモデル化されたSMTフロアでは、AGVや部品自動倉庫の台数、作業者数、作業動線など、工程ごとにパラメータ設定が可能で、導入効果を確認することができる。

 正確なシミュレーションの実現には、使用するデータの精度が重要となる。統合生産システムNeximは、生産品種や運用方法ごとに正確なサイクルタイムの算出や、キメ細かな実績値を提供でき、シミュレーションの精度向上に有効である。

 「SMTフロアのスケジューリング」

 日々の生産計画に対し、生産現場ではライン割り当てや生産順序、作業者のシフトなどを考慮し、生産スケジュールを作成している。

 しかし、自動化を進めていくとフロア内の自動化機器が増え、スケジューリングはより複雑化する。

 このため生産スケジューラにより、所有するラインや自動化機器、作業者のスキルや勤務シフトをモデル化することで、ラインへの割り当て、さらには生産順序を考慮したセットアップの作成が可能となる。また、生産する品種ごとにタクトが異なる点は、Neximが正確に生産時間を算出する。Neximと生産スケジューラが連携することで、部品の払い出しから外段取り、運搬のタイミングまでをスケジューリングする。

NXTRが実現するFUJI Smart Factoryのモノづくり

 「実装ラインの課題」

 現在のSMT実装工程では、部品補給や段取り替えの作業などで多くの人手が必要で、作業者のスキルや状況により、生産計画(バーチャル)と実績(リアル)にギャップが生じていると考えられる。

 例えば、生産中に複数の部品が同じタイミングで部品切れになる現象(部品切れラッシュ)により、部品補給が間に合わずに生産停止が発生したり、次生産準備のため部品棚からリールやフィーダを探し、収集する作業に予想以上に時間がかかり、次生産開始が遅れたりすることが原因として挙げられる。

 「NXTRによる実装ラインの課題解決」

次世代実装を実現する「NXTR」

 SMT実装工程で最も作業者を必要とするのが部品にまつわる作業であり、ここで生じる問題が改善すべき課題である。

 これらの問題を解決するため、フィーダの運搬・交換・セットを自動で行う「スマートローダー」を世界で初めて搭載した実装機NXTRを開発した。これにより部品の交換、補給作業の自動化を実現した。

 NXTRラインでは、バッファステーションにフィーダを配置するだけで、スマートローダーが部品切れや段取り替えのスケジュールに応じて生産デバイスのフィーダと自動で交換する。

 部品切れラッシュについては、生産デバイスの空きスロットに補給フィーダをネクストデバイスとしてセットしておき、部品切れになった際に自動でネクストデバイスから部品を吸着する。その後、空フィーダを回収し、オリジナルスロットにフィーダをセットする事で部品補給のタイミングを分散し、部品切れラッシュを回避する。部品補給による停止がなくなり、計画通りの生産が実現する。

 次生産で使用するフィーダは各モジュール下部のベースバッファに事前準備することができ、必要なタイミングに合わせてフィーダを生産デバイスにセット。次生産分を含めたフィーダを載せきる運用が可能となり、段取り作業を削減することができる。また、フィーダスタンドや台車スペースの削減にもつながる。

全方位進化した印刷機 NXTR PM

 「自動化とQCDの維持」

 昨今、印刷工程の自動化に関する問い合わせも増加している。背景にデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けた工場の変革があると考えられる。

 印刷機の自動化要求に対する取り組みは、以下となる。

 部材搬送の自動化(自動搬送された部材=マスク、バックアップブロックの自動受け渡し、印刷機内への自動引き込み)、段取り替えの自動化(プログラムの自動切り換え、バックアップブロックとマスクの自動交換、次生産マスクへの自動はんだ移載と追加はんだの自動補給)、部材補給の自動化(使用済みのはんだポットとクリーニングペーパー無停止交換)。

 これらをタイムリーかつ過不足なく行うには、生産スケジューラ、AGV、実装機と印刷機の連携が必須となる。

 品質面ではSPIとの連携を強化している。SPIの測定データを印刷パラメータとひも付けし、常に装置内でナレッジとして蓄積。プログラム作成時には、部材情報を基にナレッジデータを使用し、機上画面で印刷品質(形状、高さ)、サイクルタイムを確認しながら印刷パラメータ決定をサポートする。

 また、生産中のSPI測定データを常時監視することで、にじみ傾向を検知し、エラー直前に自動クリーニングを行うことで、ライン停止を軽減する。

 FUJI Smart Factoryは、自動化を強く意識して開発されたNXTR、NXTR PMが加わったことで新たなステップに入ったと言える。NXTR、NXTR PMと部品準備の自動化は、生産現場(リアル)の実績をデジタル化するために有効である。

 (筆者=FUJI)