2021.01.15 【電子材料特集】開発センターの新設・増設 活発化

積水化学工業が20年に開設した、水無瀬イノベーションセンター(大阪府島本町)のオープンイノベーションスペース

技術開発体制充実 イノベーションを加速

 電子材料メーカー各社は、中長期の事業拡大を見据えた研究開発センターの新設・増設のための投資を活発化させている。中長期の経営ビジョンに基づき、次世代や次々世代の有望分野に照準を合わせた技術開発体制を充実させることで、イノベーションを加速していく。

 社会や技術の変化のスピードが一段と速まり、素材開発にもスピードが求められている。そうした中、各社は開発体制の拡充により、次世代通信や次世代モビリティ、次世代半導体プロセスといった成長分野をターゲットに基盤技術開発や新商品開発・プロセス開発などのスピードを大幅に加速させることで、競争力の強化を目指す。

 同時に、研究開発施設内に、顧客やアカデミア、スタートアップなど社外パートナーとの協創空間を設けることにより、他社とのコラボレーションを通じた新領域の開拓や新たな価値創造などが志向されている。

 積水化学工業の高機能プラスチックスカンパニーは20年、開発研究所(大阪府島本町)内に「水無瀬イノベーションセンター(MIC)」を開設。規模拡大とイノベーションのさらなる加速を目的としたもので、高機能プラスチックスカンパニーの戦略分野であるエレクトロニクス・モビリティ・住インフラ材分野でのイノベーション創出を加速させる。

 三つの戦略分野(エレクトロニクス、モビリティ、住インフラ材)においては、5G通信の普及、自動運転を含むCASEの進展など、通信や自動車業界の変容に伴い、各分野を横断した人や情報の融合がイノベーション創出のために重要となっている。

 開発研究所は、61年に建設した同カンパニーの主要研究開発拠点。MICを併設することで、社内外での融合を促進し、社会課題解決と同社グループおよび同カンパニーの成長に資するイノベーションの創出をさらに推進していく。

 MICは、1階部分を顧客のためのオープンイノベーションスペースとした。同スペース内には「テクノロジーガレージ」と名付けた展示・デモ実験エリアを設け、高機能プラスチックスカンパニーの最新技術・製品および、19年に制作したコンセプトカーを常設。

 実験設備を備えた「ラボスタジオ」や打ち合わせスペースも併設しており、顧客との意見交換やプロトタイピングを促進してスピーディにイノベーションのタネを創出するとともに、顧客との関係強化を図る。

 東京応化工業は、半導体デバイスの進化に伴う材料の品質要求の高まりに応えるため、相模事業所(神奈川県寒川町)の研究開発棟に新たに危険物対応のスーパークリーンルームを建設した。顧客が求める高品質のフォトレジストや表面処理剤の供給につなげる。

 昭和電工は、千葉市の研究開発機能を移転し、横浜地区(横浜市神奈川区)に同社グループのグローバル研究開発施設を新設する。同施設では同社グループの技術・知見を集結した研究開発ハブを形成し、①将来社会的に重要となり得る製品・技術の探索、実用化に向けた研究②電子材料関連技術の高度化によるSociety5.0実現への貢献③AIを融合した開発手法を創出--の三つを主な役割に掲げる。

 施設にはカンファレンス/研修/ワークショップの実施が可能なスペースを設置。多様な人材が集う「融合の舞台」として、オープンイノベーションを含む国内外の多様な人材が相互に交流し、新たな価値を生み出す場としても活用していく。施設の供用開始は22年春を予定。

 AGCは、総工費約200億円を投じてAGC横浜テクニカルセンター(横浜市鶴見区)内に建設していた新研究開発棟を完成させた。同研究開発棟には、社内外の協創を加速させる協創空間「AO(アオ、AGC OPEN SQUARE)」を設置、20年11月にオープンした。

 新研究開発棟により、2カ所に分散していた基盤技術開発、新商品開発、プロセス開発、設備技術開発機能を集約・統合し、研究開発スピードを大幅に向上させるとともに、ほかの企業や研究機関との協創によって、新領域の開拓や新たな価値創造を実現していく。協創空間AOは、顧客やアカデミア、ベンチャー企業など社外パートナーとの協創を加速する場として活用する。

 帝人グループで軽量複合材料製品を手がける米国コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP)は20年、米ミシガン州に「アドバンスド・テクノロジー・センター(ATC)」を開設した。

 CSPでは、帝人が持つ複合成形材料や炭素繊維に関する知見を融合し、EVやHEVなど環境対応車向けの軽量・高強度な部品開発を進めている。自動車向け複合成形材料事業の日本・欧州にある各研究開発拠点との共同開発をさらに強化することを目的に、ATCを設けた。

 さらに帝人は、欧州での自動車向け複合成形材料のデザイン・設計やプロトタイピングなどの機能を担うテクニカルセンターとして、独ブッパタール市に「テイジン・オートモーティブ・センター・ヨーロッパ」(TACE)を設立することを決めた。