2021.02.03 50年排出実質ゼロ、企業まだ「及び腰」?帝国データ調査、8割超が取り組み
地球温暖化問題を巡り、国が50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げたことを受けて、帝国データバンクは、同ガスの排出抑制や削減に対する企業の意識調査を実施した。何らかの取り組みを始めている企業が8割を超える一方で、国の目標達成については否定的な見方が過半を占めた。「まだ、及び腰の姿勢」(帝国データバンク)が垣間見える結果だ。
調査は、20年12月-21年1月にかけて緊急的に実施。無作為で抽出した全国2万3688社にネット上でアンケートを呼びかけた。1万1479社(回答率48.5%)から回答を得た。
それによると、排出抑制に取り組んでいる企業は82.6%にのぼり、取り組んでいない13.6%を大きく上回った。規模別でみると、資本金や従業員数で分類した大企業のうち取り組んでいるのは88.8%。中小企業が81.3%、小規模企業では76.1%だった。
業界別では、製造が87.1%で最も高く、その他の業界は80%前後に集中し、突出して低い業界はなかった。「製造業では、二酸化炭素排出に事業が大きく関わるケースが多いため」(帝国データバンク産業データ分析課)とみられる。
ただ、取り組む内容について具体的に複数回答で尋ねたところ、節電や節水などの「省エネ」(43%)と、「クールビズの実施」(42.6%)が群を抜いて高く、「ハイブリッド車、電気自動車の導入」(28%)、「廃棄物の抑制」(22.2%)と続いた。同課は「まだ比較的容易なレベルに多く集中している。取り組み自体に強さはなく、及び腰程度とみるべきだ」と話す。
排出抑制に取り組んでいると答えた企業9484社に対して、その目的を複数回答で尋ねても、電気料金などの「コストの削減」と答えたのが55.7%で過半を占めた。
売上高減少などを懸念
排出抑制の取り組みの課題(複数回答)としては、「他に優先すべき項目がある」が27.4%で最も高く、「主導する人材(部署)がいない」(26.9%)と続いた。「売上高の減少」(12.9%)や「企業活動の自由度の低下」(4.8%)などを懸念する声も根強い。企業からは「新型コロナ感染防止対策などに対して労力を使ってしまっている」といった声も寄せられたという。
また、本格的に動き出した国の目標「50年までに排出量を実質ゼロ」の達成可能性について、「達成は困難」とする企業が最も高い43.4%にのぼった。「達成できない」の17.9%も加えると、全体の6割超がネガティブな見方だった。「達成可能」は15.8%にとどまっている。ロードマップや明確な説明を求める意見が多くあったといい、同課は「今後は、国が様々な道筋を立てて説明し、企業側にどういう効果やメリットがあるかを示していくべきだ」と話している。