2021.04.13 Let’s スタートアップ! 銀座セカンドライフシニア起業を増やし、日本を元気に!レンタルオフィス拠点の起業支援サービス
成長が著しいスタートアップを取材し、新しいビジネスの息吹や事業のヒントを探る「Let’s スタートアップ!」。
今回は、レンタルオフィスの提供や起業家交流会の開催など、さまざまな起業支援サービスを展開する銀座セカンドライフ。2008年の設立以来、順調に成長を続け、現在では首都圏に13店舗のレンタルオフィスを構えるまでになっている。
同社の大きな特徴は、「シニア」をサービスの主な対象者として設立したスタートアップであることだ。代表取締役の片桐実央さんに、設立の経緯や狙い、会社運営におけるこだわりを聞いた。
シニアを主ターゲットにした「起業支援サービス」
「ずっとあたためてきたビジネスプランを実現したい」「いつか自分でカフェを開きたい」など、いつの時代も起業の夢を抱くビジネスパーソンは少なくない。若くしてスタートアップを立ち上げる人たちはもちろんだが、定年や早期退職などで会社組織を離れる世代にとっても、「起業・独立」がひとつの選択肢となっている。
しかし、いざ起業するとなると、ビジネスプランの練り上げや事業計画書の作成、法人登記の手続き、ワーキングスペースの確保など、大小さまざまな作業や対応が必要となる。
そうした起業時の準備や起業後の運営を支援するサービスを提供しているのが、銀座セカンドライフだ。
銀座セカンドライフでは、銀座、東京、新宿、渋谷、横浜、川崎、大宮など、首都圏の主要都市で、13店舗のレンタルオフィス「アントレサロン」を展開。会員になると、全ての店舗をワークスペースとして使えるだけでなく、法人登記や事務所の住所としても利用できる。
また同社では、起業に必要な知識を身に付けられる各種セミナーや起業相談、会計記帳の代行サービスを用意しているほか、100人規模の起業家が集まる「起業家交流会(アントレ交流会)」を定期的に開催。さらに創業者の片桐さんが、著作物や雑誌記事などで起業支援情報を盛んに発信するなど、多様な起業支援サービスを展開している。
こうした銀座セカンドライフのサービスの大きな特徴は、「シニア」を主なターゲットに立ち上げられたことだ(サービス自体は世代を問わず利用可能)。
現在65歳以上の高齢者の数は増加傾向にある。そうした日本社会の動きもあり、同社の起業支援事業は堅調に成長を続けている。
祖母の介護がきっかけでシニア起業支援をスタート
銀座セカンドライフはなぜシニアをターゲットにしたサービスを立ち上げたのか。その理由は、創業者である片桐さんの「介護体験」にあるという。
私が銀座セカンドライフを立ち上げたきっかけは、祖母の介護です。祖母が認知症になっていくのを見ていて、「自分にも何かできたのではないか」と思いました。その思いを起業につなげたのです。
起業に当たり介護事業ではなく、起業支援を選んだのは、自分の経歴を生かそうと考えたからです。
私はもともと花王のコンプライアンス部門の法務部にいました。そこでの経験を、起業支援であれば生かせると考えたのです。
ただ、「シニアの起業を支援する」という事業プランに至るまでの道のりは、平坦なものではありませんでした。
花王の法務部から、「起業する前に別の業界も経験しよう」と大和証券SMBCに転職しました。金融業界に身を置きながら、ファイナンシャルプランナー(FP)と行政書士の資格を取ろうと考えたのです。
ところが大和証券では、行政書士の資格試験の2カ月前に、IPO(新規上場株)関連の大きな案件を依頼されることになり、試験勉強と両立できるのかと、とても迷いました。
ただ、やはり行政書士の資格を取りたくて転職したので、いろいろ迷った末、大和証券を辞めることを決めました。「辞める」と決めたのは自宅でした。夜8時頃、「会社を辞めていいですか?」と家族に話したときの光景は今でも忘れられません。
その後2カ月間、勉強に集中した結果、無事に行政書士の資格を取得することができました。
いよいよ会社設立の準備をはじめることになったのですが、この時点では、まだ「シニアのセカンドライフを支援したい」といった漠然としたイメージしかなく、具体的な事業プランはありませんでした。
そのときに私が実施したのが、三つの円を描き、自分の考えを整理することです。一つ目の円には自分の「やりたいこと」を書く。二つ目の円には自分が「できること」を書く。そして三つ目の円には「お金になること」、つまり市場性があることを書き込みます。
この三つの円が重なったところに自分のビジネスがないかと考えていった結果、「シニアの起業支援をする」という今の事業プランが出来上がったのです。
「レンタルオフィス導入」を決めた、起業直前の体験
銀座セカンドライフのもう一つの特徴である「レンタルオフィス」はどういった経緯で提供することになったのだろう。
私は銀座セカンドライフの設立直前に、行政が運営するインキュベーション施設に入っていました。わずか2カ月ほどでしたが、そこでの体験が「すごく良いな」と感じたことが、レンタルオフィスのサービスを導入したきっかけです。
そのとき入っていた施設の利用者は30人ほど。当初は「異業種の人たちだから」とあまり積極的に関わることはしませんでした。
しかし、その異業種の人たちのアドバイスや指摘がすごく役に立ったのです。
また、モチベーションを維持するのが難しい起業準備期間において、「また頑張ろう」とやる気にさせてもらうなど、いろいろな面で支えられました。
そうした体験をしていたため、起業支援サービスでは「必ずレンタルオフィスを提供するぞ」と決めていたのですね。
ただ、私が会社を立ち上げた頃のレンタルオフィスには、「少し怪しい場所」というイメージもあったかもしれません。
そこで当社では、怪しい施設だと思われないよう、雑居ビルの上階ではなく、通りから見える一階にレンタルオフィスの一号店を設置するなど、さまざまな工夫をしました。
現在も、ビジネスをしていく上でブランド力がある街を選んだり、行政の起業支援が手厚いエリアを選んだりと、場所選びにはかなり細かくこだわっています。
コロナで事業の柱「交流会」が実施できない事態に
設立以来、堅調に成長している銀座セカンドライフだが、やはり新型コロナウイルス流行の影響は大きかったようだ。
メディアの取材などで、事業がうまくいった理由を聞かれたときには、当社が定期的に実施してきた「起業家交流会(アントレ交流会)」の存在が大きかった、と話しています。
これは、起業家や起業を志す人たちが集まる会で、2008年の創業時から100回以上続いています。
当社の会員はもちろん、外部の方々も参加でき、ビジネスに発展する出会いがあったり、ビジネスの新しい気付きを得たりする貴重な場となっています。また、当社の認知度を高める重要な事業の柱であるとも考えています。
この交流会がコロナの影響によって、大規模なものは開催することができなくなってしまいました。
今すぐ何か困るということはなくても、10年後、20年後に大きな影響が出てくるのではないかと不安を感じています。
当社では、オンラインセミナーの実施など、以前からサービスのオンライン化に努めてきましたが、今回のコロナ禍を受け、その動きをより強化するようにしました。
コロナ禍で多様化する会員の皆さんのニーズにもしっかり対応できるよう、急ピッチで体制を整えています。
起業家をさらに増やし、日本の経済を元気にしたい
続いて銀座セカンドライフが抱いている未来像を伺った。
新しく何か別の事業を始めるということは、今は考えていません。
レンタルオフィスのサービス自体がまだ足りていませんし、拡大する余地はまだまだあると考えています。
現在は首都圏に13店舗を構えていますが、これを増やしていくのが今の目標です。
現在、国や自治体もいろいろな起業支援を行っていますが、まだまだ足りていないのが現状です。特にシニア世代の方々には情報がうまく行き渡っていません。
そうした現状を改善するためにも、当社のレンタルオフィスを増やしていき、各拠点に起業家がどんどん増え、日本の経済がより元気になっていけばうれしいなと考えています。
求む、「コロナ禍でも起業しようと頑張る人」
最後に銀座セカンドライフが今求めているものを聞いた。
私たちが必要としているのは、「コロナ禍でも起業しようと頑張っている人」です。
つい先日、某メディアの取材で「コロナ禍で起業した人を教えてください」と言われました。
少し前だと、起業して5年ほどたった人や成功している人じゃないと取材対象にならなかったのですが、今回はシンプルに「起業した人を紹介してほしい」という話でした。
なぜかとそのメディアの担当者に尋ねると、「コロナ禍で起業しているだけですごいので」という答えが返ってきたのですね。
それを聞いて、「確かにそうだ」と気付いたのです。
この時代に起業したいと思っている人は、相当な覚悟がある人でしょう。当社でもそういう人を全力で応援したいと思ったので、この言葉を書かせていただきました。
- 社名
- 銀座セカンドライフ株式会社
- URL
- https://entre-salon.com
- 代表者
- 代表取締役 片桐実央
- 所在地
- 東京都中央区銀座7-13-5 NREG銀座ビル1階
- 設立
- 2008年7月
- 資本金
- 10,000,000円
- 従業員数
- 23人
- 事業内容
- 起業および起業後の法律・会計を中心とした支援(レンタルオフィス運営、起業家交流会およびセミナーの開催など)