2021.04.01 【半導体材料特集】昭和電工の半導体デバイス放熱用窒化アルミニウムフィラー技術

窒化アルミニウムフィラー

  昭和電工は、放熱フィラー製品のラインアップ拡充として、半導体デバイスなどの放熱フィラー用の高耐湿・高熱伝導窒化アルミニウムフィラー(アルミフィラー)を開発し、20年からサンプル提供を開始している。高い熱伝導性を維持しながら耐湿性を大幅に向上させており、デバイスの小型・軽量化を実現する。

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 半導体の高性能化によりデバイス内で発生する熱は増加しているが、デバイス自体の小型化・高集積化の進展により、発生した熱を外部に放熱することが難しくなっている。蓄積された熱は、デバイスそのものだけでなく、これらを組み込んだ電子機器の性能の低下や、信頼性、安全性に影響を及ぼす恐れがある。こうした熱による悪影響を避けるため、発生した熱をいかに素早く除去するかが非常に重要な課題となっている。

 窒化アルミニウムは高い絶縁性、シリコンと同程度の熱膨張係数、半導体製造時に使用される塩素系ガスに対する耐性などの優れた特性を有している。また、アルミナや窒化ホウ素などの他のフィラー材料に比べて熱伝導性にも優れているが、水分が付着すると加水分解を起こして腐食性のアンモニアが発生することが問題となっていた。

アンモニア発生1万分の1

 同社が開発した高耐湿・高熱伝導窒化アルミニウムフィラーは、電子部品の高集積化やパワーデバイスの高性能化に伴う放熱性の高い材料への要求に対応して開発した製品。窒化アルミニウムの表面に独自の極薄膜による表面処理を行うことにより、樹脂に充塡(じゅうてん)した時の熱伝導率を低下させることなく、表面処理をしていない窒化アルミニウムに比べてアンモニアの発生を1万分の1に抑えることが可能となり、高耐湿性・高熱伝導性を有する窒化アルミフィラーの開発に成功した。球状であるため扱いが容易なのも特徴だ。

 同社では、サンプル提供を通じて市場開拓を推進し、23年から窒化アルミフィラーの量産を開始する計画。

 製品ラインアップは、粒度分布の異なるグレードを取りそろえている。次世代移動通信規格5Gや自動車市場におけるCASEの進展により、今後ワールドワイドで高い成長が見込まれる半導体デバイス向けの最適なソリューションとして提案していく。

最適な放熱フィラー提案

 同社は、放熱フィラーでは、従来からアルミナフィラー、窒化ホウ素フィラーを手掛けており、新たに窒化アルミフィラーをラインアップに加えた。アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムにより、中熱伝導から高熱伝導までの絶縁放熱フィラー材料を取りそろえている。材料の豊富なバリエーションを生かしながら、粒子配合や表面処理などをカスタマイズすることで、顧客の熱伝導レベルに合わせた放熱フィラーを提案する。配合のカスタマイズにより、樹脂にフィラーを混錬した際の流動性が向上し、熱伝導部材内の空隙を低減し、耐電圧特性低下を抑制する。

 放熱フィラーでは、特に横浜事業所で生産する丸み状の微粒アルミナ「AS」は、同社のオンリーワン製品となっている。今後も、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムの3種類の材料をそろえることで、市場の幅広いニーズに対応していく。

5G向けなどの需要期待

 アプリケーション別では、5G化が進む通信関係(端末/基地局)や電子化・電動化が進展する自動車などでの需要の伸びに期待する。

 同社は、セラミックス事業部における電子材料製品として①電子デバイスの放熱フィラー②MLCC(積層セラミックコンデンサー)用酸化チタン③ガラス研磨剤を展開している。

 MLCCの原料である超微粒子酸化チタン「スーパータイタニア」についても、高純度、超微細でバラつきが少ない点などが市場で高く評価されており、今後もMLCC市場の拡大に合わせた事業拡大を推進する。