2021.04.07 中国の半導体産業 急成長 製造装置需要5年で3.7倍 中国企業の台頭顕著

半導体の生産を拡大する中国ファウンドリー最大手のSMIC(中芯国際集成電路製造)

AMEC(中微半導体設備)が「セミコンチャイナ」で発表した新世代エッチング装置「PrimoTwin-Star」AMEC(中微半導体設備)が「セミコンチャイナ」で発表した新世代エッチング装置「PrimoTwin-Star」

 中国の半導体産業が急成長している。政府の「中国製造2025」に基づく半導体内製化政策の推進による半導体分野への巨額投資を背景に、半導体製造装置の需要も拡大。「自立自強」を目指す中、中国同装置企業の台頭も顕著になってきた。

 中国は新型コロナウイルスの感染を抑え込み、製造業も昨年6月ごろから回復し、現在ではEV(電気自動車)、第5世代高速通信規格5G、IoT、産業機器などの需要拡大に伴いコロナ前を上回る活況が続いている。3月17~19日の3日間、上海新国際見本市会場(SNIEC)で開催された半導体製造装置展「セミコンチャイナ2021」(主催=SEMIチャイナ)も多くの来場者でにぎわった。

 WSTS(世界半導体市場統計)の半導体統計によると、2020年の半導体市場規模は前期比5.1%増の4331億ドル、世界最大市場の中国は同9%増の1434億ドルとなった。21年はコロナの状況が改善し世界経済が回復することを前提に、世界市場は4694億ドル、同8.4%増と過去最高を見込む。

25年の自給率70%目標

 中国製造2025は政策の核心にある「中国半導体産業の育成」において、半導体自給率を20年までに40%、25年までに70%に引き上げる目標を示す。米市場調査会社IC Insightsの「25年に中国で製造される半導体は中国内で消費される19.4%にとどまり、自給率70%に遠く及ばない」との予測もあるが、米国の制裁がかえって中国の自立自強を促し、国を挙げて半導体への投資を加速させている。

 紫光集団は武漢市、南京市、成都市、重慶市で相次いでフラッシュメモリーやDRAMなどの工場を建設している。中国半導体ファウンドリー最大手であるSMIC(中芯国際集成電路製造)は23億5000万ドル(約2600億円)を投じて深圳市に12インチシリコンウエハーで月産4万枚の新工場を建設し22年の稼働を目指すなど、国内で数々のプロジェクトが進行。これに伴い半導体製造装置の需要が急激に拡大している。

 SEMIの半導体製造装置市場予測によると、世界では20年に過去最高の689億ドル(前期比16%増)を記録した。うち中国は187億3400万ドル(同39.3%増)で、15年の約50億ドルから5年間で3.7倍に成長。韓国を抜き初めて世界最大の半導体製造装置市場となった。SEMIは世界市場の成長は今後も継続し、21年に719億ドル、22年には761億ドルに到達すると予測。中国がトップシェアを維持する見通しだ。

 中国の半導体製造装置市場ではこれまで、露光装置(ASMLほか)、コーター・デベロッパー(東京エレクトロンほか)、エッチング装置(ラムサーチほか)、CVD装置(アプライドマテリアルズほか)などで米欧、日本企業のシェアが高く、中国の同製造装置企業は太陽電池やLED向けを主力としてきた。しかし中国企業が台頭し、徐々に日本、米欧企業との距離を縮めつつある。

 中国最大の半導体製造装置企業であるJingsheng(浙江晶盛機電)は主力の太陽光、LEDに加えて300ミリメートルウエハー対応の単結晶引き上げ装置など半導体分野を広げている。

 NAURA(北方華創科技集団)は中国政府の資金援助を受け、洗浄装置企業の米アクリオンシステムズを買収。総合半導体製造装置メーカーとしてIC製造向けのエッチング装置、PVD/CVD/ALDなどの成膜装置やウエット洗浄装置、熱処理装置などを製造する。

 AMEC(中微半導体設備)は5ナノメートルプロセス用の最先端ドライエッチング装置を開発し、TSMCやNANDメーカーのYMTCから認定を受けているといわれる。セミコンチャイナ2021では導電性/誘電性フィルムのエッチングに使用する新世代エッチング装置「PrimoTwin-Star」を発表した。

 SEMIや中国電子特殊設備産業協会によると、20年の中国エッチング装置市場は世界市場の31.2%となる40億3000万ドル。米ラムサーチがトップシェアだが、AMECが20%、NAURAが6%のシェアを持つまでになっている。

 Jingshengは中国で唯一、完全な単結晶育成装置の開発に成功した。テスト装置はJCET(長電科技)、TFME(通富微電)などが有力企業。このほかリソグラフィー装置、CMP装置、イオン注入装置、検査装置などでも中国企業が育ってきている。