2021.04.27 【スマホ用部品特集】5Gの普及本格化追い風にビジネス拡大 電子部品各社 高機能製品・技術開発に力

5G対応タフスマートフォン(京セラ)

 電子部品メーカー各社は、第5世代移動通信規格5Gの進展により高機能化が進むスマートフォンに照準を合わせた技術開発に力を注いでいる。スマホの高機能化・高性能化は搭載部品への技術要求を一段と高度化させており、部品メーカーには一層のイノベーションが求められる。電子部品各社はワールドワイドでの5G端末の普及が本格化する中で、今後もスマホ向けビジネスの継続的な拡大を目指す。

 スマホの世界需要は、年間14億台前後に達する。スマホの世界出荷台数は、2016年をピークに17年以降は漸減傾向にあるが、際立ってボリュームの大きい市場であるだけに、電子部品メーカー各社のスマホ市場重視の姿勢に変化はない。

 加えて、世界のスマホ市場では、新興国を含め高機能化・ハイエンド化の進展による端末の高付加価値化が一段と進み、搭載部品の付加価値向上や新たな電子部品需要の増大を促進している。

 世界のスマホ市場は、近年は端末買い替えサイクルの長期化傾向が強まる中で、大手端末メーカー数社による寡占化の傾向が強まっている。そうした中で、18年以降、米中貿易摩擦が激化し、米国政府による中国ファーウェイ規制などが進展した結果、20年はファーウェイのスマホ出荷台数が大きく落ち込むなど、端末メーカー間のシェア変動も再度激しくなってきている。

 一方で、20年からは5Gスマホの販売が本格化。5G市場での主導権獲得に向けた端末メーカーの開発競争も活発化し、市場を活性化させている。20年序盤は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う消費減退がスマホ市場にも影響を与えたが、20年春から夏にかけて需要が回復し、その後は堅調な需要推移が続いている。新型コロナウイルス感染拡大が始まった20年序盤の段階では、20年の世界のスマホ需要は19年比で1割程度の落ち込みが予想されていたが、結果的には1桁台半ば程度の軽微な落ち込みにとどまった見通し。

 20年は「5G元年」とされたが、21年は「5G本格普及元年」と位置付けられ、5G通信インフラ網の拡充とともに、5G端末への買い替えに一段と弾みがつくことが予想されている。

 5Gで先行する中国では、既に5Gスマホの普及率が6割から7割程度に達しているとも指摘されているが、20年春に主要携帯キャリアの5Gサービスが出そろった日本を含め、今後、ワールドワイドのさまざまな地域で5Gスマホが本格普及期に入ることが見込まれる。

 20年の世界のスマホ出荷台数は、年前半の新型コロナの影響に加え、ファーウェイのスマホ出荷の大幅減などにより、トータルではマイナス成長となったが、21年は5Gの普及本格化を追い風に、成長への回帰が期待されている。

 今後の世界のスマホ市場は、普及一巡と買い替えサイクル長期化などにより、台数ベースでの高い成長は見込みにくいものの、高性能なフォルダブル端末をはじめとする端末の一層の高機能化が搭載部品のハイエンド化を促進する見通し。

ミリ波帯対応デバイスなど開発活発

 最近の新型スマホは、ディスプレーの大画面・高精細化・フルフラット化や、内蔵カメラの高性能化と搭載数量増加、伝送速度の向上やメモリーの大容量化、内蔵バッテリーの性能向上などが進み、新たなセンサーや機能モジュールの搭載が進んでいる。同時に、高密度化の進展により、基板搭載部品や内部接続部品のさらなる微細化、パッケージング技術の高度化などが進展している。

 中でも、スマホ1台当たりのカメラ搭載数量は右肩上がりが続く。米アップルがカメラ3個を搭載した新型アイフォーンを発売したほか、中国系大手端末メーカーなどでは、4個のカメラを搭載したハイエンドモデルなども発売されている。

 5Gスマホ向けに、小型のミリ波帯対応デバイスの開発も活発化している。スマホの一充電当たりの使用時間の長時間化や急速充電技術の拡充も進展し、高容量対応のパワー系デバイスへの置き換えなどが進んでいる。さらに、有機ELディスプレーを搭載したフォルダブル端末も発表されるなど、次世代スマホの開発競争に一層拍車がかかっている。

 スマホの技術進化に対して、電子部品各社は、既存部品のブラッシュアップを図るとともに、新機能搭載や5G化に対応するための新たな電子部品開発に全力を挙げている。

 営業活動面では、勢いのある海外有力スマホメーカーへのアプローチがより重要視されており、主要電子部品各社はアップル、サムスン電子、および中華系大手メーカーへの密着を進めるとともに、それ以外の業績好調メーカーへのアプローチを強めている。

 同時に、最近は日系スマホメーカーの5G端末のリリースなども進展しているため、部品各社は国内外でのマーケティングを強化することで、5Gスマホ市場でのシェア拡大を目指す。

 世界のスマホ市場では、市場の成熟化が進む中で、端末メーカー同士のシェア向上に向けた競争が一層激化している。米韓中などのトップクラスのメーカーでは、各社ともにデザイン性なども含めた独自性の発揮に従来以上に力を注いでおり、技術力のある電子部品企業にとってはチャンスとなる。

 電子部品各社は、スマホ市場を事業拡大のための最重点分野の一つに位置付け、スマホの技術進化や市場変化に迅速に対応していくことで、継続的なビジネス獲得を目指す。