2021.05.20 【EMC・ノイズ対策技術特集】車載・産業機器向けのノイズ対策部品開発活発化

業界トップクラスのノイズ特性と低損失を両立した600V耐圧IGBT IPM(ローム)

ノイズ耐量に優れた2ch高速オペアンプ(ローム)ノイズ耐量に優れた2ch高速オペアンプ(ローム)

 電子部品メーカー各社は、自動車や産業機器向けのノイズ対策用部品の技術開発を活発化させている。各社は、車内ネットワークの高速大容量化やインバーターの高性能化などに照準を合わせた新製品の開発・投入により、自動車や産業機器の信頼性向上への貢献を目指す。

 最近の自動車市場では、ADAS/自動運転技術の高度化に伴い、障害物などに対して瞬時にブレーキを作動させるために車内LANでの速いレスポンスが求められ、通信速度の速いCAN-FDの搭載拡大が見込まれている。

 TDKは、車載LANのEMC対策用の新製品として、小型車載CAN-FD用コモンモードフィルター「ACT1210Dシリーズ」を開発、今年4月から量産開始した。良好な信号モード変換特性を実現。3225サイズの小型形状で、最大150℃の高温環境に対応する。

 車載LANは、ボディー系、安全系、パワートレイン系、マルチメディア・情報通信系に大別され、現在、ボディー系を中心に最も普及しているのはCANで、データ転送速度は最大1Mbps。ACT1210Dシリーズは、CANおよび、そのデータ転送速度の5倍となるCAN-FD(5Mbps)向けに開発したもの。CiA、IECの要求特性を満たし小型低背サイズ(3.2×2.5×高さ2.5ミリメートル)で、優れたノイズ抑制効果を発揮する。独自の構造設計により良好な信号モード変換特性(Sad21)を実現し通信品質に貢献する。高精度自動巻線機の導入および金属端子のレーザー溶接による継線方法により高信頼性を確保している。

 開発にあたっては、モード変換特性向上のための構造設計を工夫するとともに、リンギングノイズの発生を抑制するため良好なライン間容量を達成した。さらに、フィルター材料の変更により、150度の使用温度環境に対応する。

 主な特性(ACT1210D-101-2P)は、コモンモードインダクタンス100μH(プラス50%/マイナス30%)。直流抵抗3Ωmax。絶縁抵抗10MΩmin。定格電流115mAmin。定格電圧80Vmax。

 ロームは今年4月、小型産業機器や白物家電に搭載される各種インバーターの電力変換に適した、業界トップクラスのノイズ特性と低損失を両立した600V耐圧IGBT IPM(インテリジェントパワーモジュール)「BM6337xシリーズ」計8機種を新たに開発した。

 新製品は、内蔵FRD(ファスト・リカバリー・ダイオード)のソフトリカバリー性能と内蔵IGBTの最適化により、一般品に比べて6dB以上(ピーク比較時)の放射ノイズ低減を達成。従来必要だったノイズフィルターの簡略化が検討可能となった。低損失を実現した最新のIGBT素子を搭載し、同社従来品に比べて電力損失を6%(fc=15kHz時)低減。業界トップクラスの水準を達成し、各種機器の低消費電力化に寄与する。加えて、温度モニター機能を大幅に改善し、高精度プラスマイナス2%(2℃相当)を実現したことで、従来高精度の温度モニターに必要だった外付けサーミスターの削減も検討可能となり、部品点数や設計工数削減に貢献する。基板実装後の製品識別機能を新たに追加したことで、誤実装の防止にも寄与する。

 同社は、20年9月に、負荷容量で一切発振しない2ch高速グランドセンスCMOSオペアンプ「BD77502FVM」を発表した。計測機器や制御機器で使われる異常検知システム、微小信号を扱う各種センサーなど、高速のセンシングを必要とする産業機器・民生機器向けに開発した製品。

 同製品は、圧倒的なEMI耐量(ノイズ耐量)と、高速増幅(高スルーレート10V/μs)に対応しながら配線などの負荷容量で発振しない特長で高評価を得ている高速オペアンプの2回路内蔵新製品。圧倒的なノイズ耐量により、全ノイズ周波数帯域での出力電圧駆動をプラスマイナス20mV以下に抑えると同時に、負荷容量で発振しやすい高速タイプのオペアンプにおいて一切発振せずに安定動作が可能。

 このため、センサーなど微小な信号を出力するデバイスの後段に設置した際、外部ノイズと負荷容量の影響を受けずに高速の信号増幅を可能にし、2ch製品としてコンパクトに、アプリケーションの設計工数削減と高信頼化に貢献する。