2021.07.14 【LED照明総合特集】回復の兆しが見える住宅分野を中心に需要伸長

回復の兆しも見えてきた国内の照明市場

 新型コロナ禍の影響で伸び悩んでいた国内の照明市場に、回復の兆しが見えてきた。住宅分野を中心に需要が復調し始め、衛生・清潔ニーズに応える紫外線関連製品や、非接触を実現する照明器具などの開発が加速。立ち上がってきた新たな需要を捉える動きを照明各社は活発化している。ニューノーマル(新しい日常)に合わせた対応が、LEDをはじめ照明にも求められてきた。

 日本照明工業会(JLMA)の統計によると、4月の出荷台数は、屋外用非住宅LED照明が前年を割り込んだのを除き、前年を上回る伸びを示した。屋内用非住宅LED照明は前年同月比6.7%増となり、住宅用と合わせて回復基調が見て取れる。

 住宅分野が事業の中心であるオーデリックの伊藤雅人社長は「新築も増えてきた。状況は良くなってきている」と分析する。

 住宅分野は当初、接触を避けるために、リフォーム需要が停滞。新築案件も動きが鈍化していた。

 しかし、コロナ禍が長引くにつれ、在宅時間の増加により、家庭内を見直す機運が高まり、リフォーム需要につながっていった。感染症予防策も各所で徹底されたことから、工事を伴う案件が動きだし、照明需要を支えることになった。

 とはいえ、年間で見ると需要は減少している。LED照明の普及が一定水準に達し、価格にも値頃感が出てきたことから、出荷台数と金額の伸びが鈍化。人口減少局面にある日本では、照明需要を押し上げる新築着工の増加などは期待しにくく、LED照明の拡大期を経て、漸減傾向をたどることがもともと予測されていた。

 そんな折に新型コロナの流行が押し寄せ、各所で新築工事や設備更新、リニューアル案件などの延期や中止が相次ぎ、昨年度は非住宅分野を中心に出荷が鈍る結果となった。

 ただ、コロナ禍2年目となる今年度は、需要が復調しつつある。業界関係者の多くは「前年以上にはなる」と述べているが、2019年度を上回る規模にまではいかないとの見方だ。

 こうした市場環境を照明各社は理解している。その上で、照明の単価アップにつながる付加価値の創出を重視している。

明かりの質向上

 その一つが明かりの質の向上だ。JLMAは、HCL(ヒューマン・セントリック・ライティング)を掲げ、生活シーンやリズム、人に合わせた優しい明かりを業界全体で目指す方向性を打ち出している。IoT技術をベースとしたもので、生活の質を高める快適な明かりと位置付ける。

 もう一つがCSL(コネクテッド・スマート・ライティング)だ。他機器との連携や効率的な照明制御などを軸にしている。家電をはじめとするさまざまな機器がIoT化する中、照明も社会環境と時代に合わせた対応を進め、付加価値を提案していく狙いだ。

IoT化も進む

 スマートフォンとの連携・操作やスマートスピーカーからの音声操作など、既に照明のIoT化も進み始めている。普及しているとは言い難いが、屋内外の環境でIoT化が進展していることから、年々、照明のIoT化には関心が高まっている。

 JLMAも4月の出荷統計から、CSL/HCLの出荷に占める割合の公表に踏み切った。現状、全体では14.7%とまだ低い。住宅用が14%、屋内用非住宅が16.2%と屋内用が中心だ。屋外用非住宅でもIoT対応品はあるが、わずか2.7%を構成するにすぎない。

 今後は、CSL/HCLの割合はこれまで以上に高まってくるはずだ。コロナ禍において、照明に求められるニーズも変わり始めており、新しい社会と生活の環境に合わせた対応を各社は進めていく必要がある。