2021.07.29 【半導体/エレ商社特集】菱電商事自社の大規模植物工場稼働へ

正垣 社長

 菱電商事は、2020年度からスタートした中期経営計画「ICHIGAN2024」に掲げる成長事業のビジネスモデル確立と次世代新規ビジネスの創出、基幹中核事業の生産性向上、事業推進基盤強化などを骨子に、事業の拡大に取り組んでいる。

 正垣信雄社長は「3月までの受注残もあり、4月以降の売り上げは順調に推移している。半導体需要は自動車、民生、産業用などさまざまな分野で活発だが、品不足による納期対応が課題。FAも戻ってきた。サプライチェーンの製品供給に対する先行きの不安はあるが、植物工場の立ち上げなど新しい価値を創造する事業を着実に進めている」と話す。

 新規事業として取り組み、順調に伸長しているスマートアグリの植物工場はファームシップ社(東京都中央区)と合弁で「ブロックファーム合同会社」を20年10月に設立。自社の植物工場(静岡県沼津市)を新設し22年3月に稼働する。敷地面積2万平方メートル、建物延べ面積9000平方メートルの規模で、ホウレン草を年間約1000トン生産する閉鎖型大規模量産工場として運営する。

 ホウレン草の植物工場での生産は世界でも類がない。正垣社長は「植物工場は電子デバイス、空調・冷熱、FA、エネルギーマネジメント技術やIoT技術を組み合わせ、温湿度、CO₂、人工光などを精密に制御する高度な環境制御技術から成り立っている。自社の植物工場は、スマート農業に向けた研究開発機能も持っており、工場で展開する環境制御技術を大規模工場や大型ビル施設などにも応用展開して新たなビジネスを創出し、カーボンニュートラルにも貢献したい」と次の展開を見据える。

 新しい試みの一つとして、東京・池袋(菱電商事本社は池袋)の街をバーチャルとリアルのコミュニティーにより活性化を目指すため、テレビ東京などが推進するプロジェクト「池袋ミラーワールド」に参画し、バーチャル空間での新たなビジネスの創出を模索する。

 以前から進めているデジタル経営やソリューションの仕組みのデジタル化などのスピードアップを目的に、従来の情報システム部を母体に「DX戦略推進室」を4月に新設した。