2021.08.05 【ハイテクびとInterview】シナダイン AOC&MEプロジェクトプランナー 朝倉哲也氏

台湾の最先端半導体・センサーを日本の顧客に提供
AOCとME分野強化

 シナダインは1975年10月設立のエレクトロニクス商社。大手商社にはない小回りの利く機動力を強みに半導体製品やモジュールまで多様な商材を取り扱い、カスタム要求にも対応する。朝倉哲也AOC&MEプロジェクトプランナー(営業支援部販売企画課)に聞いた。

 ―国内外の商材を取り扱われていますね。

 朝倉氏 商材は米国、欧州、台湾などの海外半導体、光エレクトロニクス関連を主力に取り扱っているが、台湾には2018年から台北に現地法人を構え、ユニークな商材を発掘し、既に10社以上のサプライヤー製品を取り扱っている。台湾は工業技術院(ITRI)が最先端技術開発を支援するなど国を挙げてエレクトロニクス産業の育成を図っている。半導体ファウンドリーのTSMCも擁し、世界のエレクトロニクスの最先端情報が台湾に集まっている。

 ―AOC&MEプロジェクトが目指されているのは。

 朝倉氏 当社は成長性のある通信、ヘルスケア、産業機器、環境技術、航空宇宙などの市場開拓を進めている。その中でAOC(アクティブオプティカルケーブル)とME(メディカルエレクトロニクス)の2分野で、台湾を中心にした付加価値の高い新しい商材を発掘し、日本の顧客に紹介することで、顧客の事業価値を高めてもらうことを目的にしている。

 ―最近のユニークな製品を教えてください。

 朝倉氏 AOCでは台湾Pasidal社製のThunderbolt3アクティブ光ケーブルがある。USB3.1Gen1の8倍に相当する40ギガbpsの伝送帯域を有し、最長50メートルのケーブル長でフレキシブルな接続を可能にする。

 ThunderboltはMACブックにも採用されている超高速インターフェースで、4Kディスプレーの場合、18ギガbpsが必要だが、このアクティブケーブルは2画面同時表示に加えて、ストレージデータの同時伝送も可能になる。

 ―MEではいかがですか。

 朝倉氏 血中酸素飽和度(SpO₂)を手首で測定する腕時計型のパルスオキシメーター向けに、台湾tBPC社の反射式PPGセンサーと同センサーモジュールの販売を開始している。tBPC社は台湾工業技術院のスペシャリストが設立した技術集団で、独自の特許技術による革新的なテクノロジーでリストバンド型パルスオキシメーター、完全非侵襲型血糖測定器などさまざまな医療分野向け製品を市場に出している。パルスオキシメータ-は新型コロナウイルス感染症を機に重要な医療機器として需要が拡大している。

 肺から取り込まれた酸素は血液中の赤血球の中にあるヘモグロビンと結合して、全身に送られる。パルスオキシメータ-は赤外線と赤色光の光を利用して、血液中のヘモグロビンのうち酸素と結び付いているヘモグロビンの割合(%)を表示する。血管の拡張、伸縮によってこの割合が変化することで脈拍数も測定できる。

 ―tBPC社の反射式センサーの特徴は。

 朝倉氏 tBPC社のセンサーは赤外線と赤色光、緑色光の3種類のLEDを用いている。ドーム型レンズを装着した各LEDには指向性を持たせており、反射光を挟角(20度)で受光するため、従来品よりも高いS/N比が得られ精度も高い。また緑色LEDにより脈拍数もより高精度に測定できる。

 当社はtBPC社のセンサーにマイコンや電源回路、SpO₂の測定アルゴリズムを搭載したモジュールや評価ボードも提供する。

 tBPC社はセンサーの販売に加えて自社でもスマートウオッチ型のパルスオキシメータ-を台湾国内ほか海外でも一部販売しているが、日本では薬機法の承認を取得しておらずまだ販売ができないので、当社としてはセンサーやモジュールを日本の医療機器メーカーなどに提案し、市場を開拓していきたい。

シナダインのtBPC社センサーを搭載したパルスオキシメーター用モジュール

プロフィール

 1961年3月生まれ。89年シナダイン入社、営業部長として後進の育成にいそしんだ後、東海地区の中堅商社の東京支店長に転身。2014年シナダインに新規事業担当として復帰、18年からAOC&MEのコア・アイテムとしてPasidal、tBPC製品の取り扱いを開始。