2021.08.10 電力供給で資金還元 横浜市が新枠組み
式典で同席した室井会津若松市長(左)と、林横浜市長
再生可能エネルギー開発に取り組む東北地方の市町村と連携を進める横浜市が、新たな枠組みを始動させた。電気料金の一部が供給元の自治体に還元される仕組みを初めて活用。8月に福島県会津若松市から、これまでで最大規模となる電力供給を受け始めた。
東北地方と連携推進
新たに福島県会津若松市から
横浜市は、青森、岩手、秋田、福島の4県の計13市町村との間で、再エネ電力を優先的に横浜市内の市民や事業者らに提供してもらう協定を結び、既に青森県横浜町など4市町から供給を受けている。
そのうちの一つ、会津若松市とは、再エネ電力のコンサルタントなどを手掛ける「まち未来製作所」(横浜市中区)が提供する仕組みを活用した。横浜市は2020年12月に同社とも協定を締結し、供給を受ける市内の事業者らを募るなど準備を進めてきた。
新たな仕組みでは、会津若松市の再エネを同社がいったん買い取り、地元で地産地消する電力と横浜市に提供する電力に分配。実際に供給する電力小売事業者を入札で決めることで、需要家に安価に再エネ電力を導入してもらえる。
今回、横浜市に供給する電力小売事業者は再エネ系新電力のLooop(ループ、東京都台東区)などに決まった。横浜市のみなとみらい21地区の大規模オフィスビルを含む7事業者に供給する。
年間の電力供給量は推定で一般家庭約1600世帯分に相当する700万kWh。これまでの東北地方と連携した電力供給としては会津若松市からが最大量になる。横浜市によると、いずれの事業者も再エネ電力の導入は初めてだが、入札などの効果で従来の電力料金よりも6.7%以上割安にできたという。
地域の活力向上に
新たな仕組みは、電気料金の一部が会津若松市へ地域活性化資金として還元されるのが大きな特徴だ。700万kWhが供給された場合、年間約100万円が還元されることになり、使途は地元側が判断する。「(電力を)つくる地域と使う地域が連携し合うことが再エネの普及につながっていく」(ループの小嶋祐輔取締役電力事業本部長)効果も期待される。
会津若松市の供給元は、同市東部の山間部に立地する「会津若松ウィンドファーム」(発電事業者=コスモエコパワー)。風車8基で、設備能力は計1万6000kWに達する。
会津若松市は、明治時代から猪苗代湖などで水力発電を行い、近年は地域の間伐材を活用したバイオマス発電も稼働するなど、再エネのポテンシャルが高い地域だという。横浜市温暖化対策統括本部の岡崎修司プロジェクト推進課長は、還元される資金について「再エネ拡大の資金に活用し、好循環になってほしい」と期待する。
7月29日に横浜市役所で式典が開かれ、両市の関係者らが集まった。林文子横浜市長は「今回の連携を、電力の供給のみならず、お互いの地域の活力向上にもつなげていきたい」と期待を示した。室井照平会津若松市長は「官民一体となった大都市と地方都市との連携で、脱炭素社会の構築に向けた一助になることを祈念する」と応じた。