2021.08.17 【支える半導体製造 材料編】住友化学300億~500億円を投資、生産能力を増強

化合物半導体材料(提供=住友化学)

フォトレジスト「スミレジスト」(提供=住友化学)フォトレジスト「スミレジスト」(提供=住友化学)

 住友化学は、ファインケミカル事業で培った有機合成技術をベースに、半導体関連材料への積極投資を進めている。当面、300億~500億円規模の投資を予定している。パワー半導体などの市場開拓にも力を注ぐ。

 洗浄用の高純度薬品では、愛媛工場(愛媛県新居浜市)で生産能力を倍増させる計画。また、中国の拠点でも設備を増強する予定。現地で展開する半導体メーカー各社の需要に応える狙いがある。

 2019年度に先端フォトレジストの新工場が完成し、20年度に稼働を開始。液浸フッ化アルゴン(ArF)向けフォトレジストで世界シェアのトップ水準にある同社。新工場の立地を選定中で、近く発表予定とされる。

 また、最先端のEUVレジストについて、独自コンセプトによる材料設計などに強みを持つ。さらに開発・評価体制を強化するため、22年度に大阪工場内に新棟を完成させる。最先端のクリーンルームや装置などを導入する予定だ。

 さらに、グループの東友ファインケム(韓国)でも、半導体材料などを手掛けている。微細加工のプロセスでは、洗浄などに使われる硫酸や過酸化水素水など高純度の薬品が必要で、それらに定評がある。

 化合物半導体材料では、次世代パワー半導体で注目される新規材料として、窒化ガリウム(GaN)に取り組む。特に基板とエピウエハーの両方の製造技術を持つのが「業界でもおそらく当社だけ」という強み、それを生かしてGaN基板の大口径化、生産性向上などを通じてコスト削減に努める構えだ。

 GaNは、第5世代移動通信規格5G基地局向けなどの高周波デバイス向けに使われている。また、ガリウムヒ素(GaAs)エピウエハーは、スマートフォンやセンサー材料としても展開している。

 「GaN on GaN」のパワー半導体は低損失で省エネにつながり、小型・軽量化が図れる。データセンター用の電源や電気自動車、ワイヤレス給電、スイッチングなどの用途が想定される。自動運転の進展などで、さらに引き合いが増えるとみられる。

 同社は今後、他社との協業を通じての用途開発も進める。市場創出によって、先行者利益を確保したい考えだ。

 半導体市場について「今後も、データ通信のさらなる高速化や大容量化などで、継続的な成長が見込まれる」と分析。同社は半導体事業全体で、20年代半ばには20年度比で5割増の売上収益を見込んでいる。25年には生産能力が逼迫(ひっぱく)すると予想し、長期的な需要を見据え、さらに体制強化を検討している。