2021.08.20 【この一本】「8時15分 ヒロシマ 父から娘へ」(配給:新日本映画社)

©︎815 Documentary, LLC

美甘進示さん(©︎815 Documentary, LLC)美甘進示さん(©︎815 Documentary, LLC)

映画の場面から(©︎815 Documentary, LLC)映画の場面から(©︎815 Documentary, LLC)

映画の場面から(©︎815 Documentary, LLC)映画の場面から(©︎815 Documentary, LLC)

美甘章子さん(©︎815 Documentary, LLC)美甘章子さん(©︎815 Documentary, LLC)

 広島市出身で米国在住の美甘章子さんの「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」(講談社エディトリアル)が原作。1945年に広島で被爆した父・進示さんの壮絶な体験を、娘として丹念に聞き取り、それが2013年に英語で書籍化。14年には日本語版で執筆・出版されている作品だ。

 その内容を踏まえ、被爆75年の節目にと映画化され、今夏、全国公開された。インタビューや再現ドラマをを交えて構成する。戦争の愚かさ、原爆の残酷さだけを声高に訴えるのではない。地獄のような状況でも生きることを諦めなかった父の想い、そして、その40年後に起こったある出来事から導き出され、父から娘へ受け継がれた平和へのメッセーをひもとく。

 つらさのあまり死を考えたという過酷な被爆体験。それを経てなお、たどり着く「許しの心」とは。終盤近く、進示さんが絞り出すように語る言葉、表情が特に胸に迫る。進示さんは20年10月、94歳で死去。章子さんの著作の刊行や今回の映画化を見届けた形になった。

 生前、美機電(広島市)の社長として活躍し、中・四国電子制御部品流通協議会(CSEP)で業界にも貢献した進示さん。その縁もあって、CSEPはかねて講演を開いたり、映画の上映会を企画したりしてきた経緯がある。今夏の全国公開でも、全国組織である全国電子部品流通連合会(JEP)も含め、周知活動に協力している。

 被爆者の取材でも痛感することだが、歴史を伝える作業は時間との競争でもある。親世代、祖父母世代から様々なバトンを受け継ぐ大事さも感じさせられる。

 上映館は公式サイト(https://815hiroshima-movie.com/)で。