2021.08.23 事務機各社の4~6月業績 急回復通期でも増収増益を見込む

 事務機各社の業績が急回復している。オフィス市場は、新型コロナウイルスの感染拡大が直撃して国内外で低迷していたが、経済回復の早い欧米、中国市場で需要拡大が鮮明になってきた。国内でもニューノーマル(新しい日常)に対応した新たな需要に期待が高まる。出そろった各社の2022年3月期第1四半期(1Q、4~6月)業績は、前年同期比で売り上げを大きく伸ばすとともに、利益も大幅増益もしくは黒字に転換。足元のコロナ感染再拡大で先行きの懸念材料はあるものの、通期でも増収増益を見込む。

 リコーは、売上高が前年同期比20%超の高い伸び。増収効果や事業体質強化の効果もあり、利益は200億円以上改善して黒字転換した。オフィス分野では複合機やプリンターの販売が前年同期を大きく上回り、注力するオフィスサービス事業は、リモートワーク推進やデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)関連が順調に推移。今年度からの新事業セグメントは、デジタルサービスなど全事業セグメントで大幅な増収となった。

 通期業績見通しは「ワクチン接種の進展に伴い、下期から先進国を中心に回復が想定されるが、部品不足や海上輸送などの影響が懸念される」(松石秀隆取締役専務執行役員)として据え置いた。

全セグメント増収増益

 富士フイルムホールディングスは売上高が前年同期比27.7%増、営業利益は同2.8倍で、全ての事業セグメントで増収増益。1Qとして過去最高益となる四半期純利益を達成した。

 ビジネスイノベーション部門は新型コロナの影響からの回復で、売上高が同10.2%増、営業利益も同4.5%増と増収増益を計上。オフィスプロダクト分野では日本・中国およびアジアパシフィック地域・欧米向け輸出のそれぞれで販売台数が前年を上回った。「FUJIFILM」ブランドでの新製品展開をスタートし、新規OEMを含めたグローバル展開を加速。通期業績見通しを上方修正している。

 セイコーエプソンも、売上高、各利益とも前年同期から大幅に伸長した。プリンティングソリューションは、オフィス・ホームプリンティング、商業・産業印刷いずれも大幅増収。大容量インクタンクモデル、大判インクジェットプリンターなどが好調に推移し同セグメントは売り上げが前年同期比43%増、利益も同50%以上伸びた。ビジュアルコミュニケーション事業、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業も大幅増収だった。

 「成長領域は順調に伸長。成熟領域も構造改革の成果が表れた」(瀬木達明取締役常務執行役員)として、通期業績予想の上方修正に踏み切った。

 コニカミノルタは、前年同期から営業利益で257億円、当期利益で183億円改善し、黒字転換した。デジタルワークプレイス、プロフェッショナルプリント、ヘルスケア、インダストリーの全事業で増収だった。「売上高は、コロナ前の19年度1Qに対して95%まで回復した。これに固定経費の削減効果もあり、大幅な増益となった」(畑野誠司取締役常務執行役)。

 デジタルワークプレイス事業では複合機などのオフィス機器が、各国の経済活動再開に伴い、欧州、米国、中国のカラー機で大きく回復。また、オフィスの再開でプリントボリュームも戻った。通期業績予想は据え置いた。

 東芝テックは、ワークプレイスソリューション事業の売上高が、前年同期比40%増と大きく伸びた。複合機の売り上げが米州、欧州、アジアなど各地域で増加、国内販売も順調に拡大している。好調なPOSシステムなどのリテールソリューションを合わせ、通期で増収、大幅増益を見込む。

 OKIは、4月からプリンター事業会社OKIデータと統合。事業が含まれるコンポーネント&プラットフォーム事業は、2桁の伸び。欧米での経済回復でプリンターの消耗品が増収に貢献した。

営業利益が10倍に

 キヤノンの21年12月期第2四半期(1~6月)は、各分野で業績が急回復。売上高が前年同期比18.5%増、営業利益が同約10倍で推移したことから、通期見通しを上方修正した。「コロナ禍前を超える業績が見えてきている」(田中稔三副社長兼CFO=最高財務責任者)。プリンティングはオフィス複合機がほぼ計画通りに回復。ホーム向けインクジェットプリンターは旺盛な在宅需要を捉えて引き続き好調に推移した。