2021.08.27 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<55>ドイツに見るデジタル化と5G化のヒント⑦
先般閉幕した東京オリンピックで起死回生の大逆転を演じてくれたのが、卓球混合ダブルス準々決勝でドイツのフランツィスカ/ゾルヤペアと熱戦を繰り広げた水谷隼/伊藤美誠ペアだ。試合は一進一退でフルセットまでもつれ、最終ゲームも6-10と追い込まれたが日本ペアは劣勢から奇跡的な追い上げで、幾度のマッチポイントを握られながらも歴史的勝利を飾った。
ドイツの卓球のメダル獲得数は、中国、日本に続いて3位。非アジアでは断トツの強さだ。ドイツで卓球が盛んな理由の一つに、プロリーグ「卓球ブンデスリーガ」とそれを支援する民間のドイツ卓球協会の存在がある。彼らは〝戦略的プラットフォーム〟を立ち上げ、卓球に興味のある人たちとのコミュニケーションを通して地域活性化と育成、ビジネスを推進している。
卓球からインダストリー4.0の話に戻そう。前回も説明した「プラットフォーム・インダストリー4.0」も、実はインダストリー4.0に興味のある人たちとのコミュニケーションの場として設立された〝戦略的プラットフォーム〟と言える。もちろん集うのは、工場などのデジタル化に必要なIoT、人工知能(AI)、第5世代移動通信規格5Gなどを活用してデータを収集したりデータを分析したり、さらにデータ通信の方法など、前回解説したITとOTを模索している人たちになる。
そこで、同プラットフォームにおいて公開されているインダストリー4.0のリファレンス(参照)モデルとなる「RAMI4.0」(リファレンスアーキテクチャーモデル・インダストリー4.0)を紹介したい。
方法を標準化
RAMI4.0は、インダストリー4.0を実現するための標準化に向けたフレームワークだ。簡単に言えば、中小企業をはじめ誰でもインダストリー4.0を推進できるように業種ごとにデジタル化の方法を標準化しようというもの。より効率的に進められるように、既存の標準規格で使えるものはできるだけそのまま使おうというものだ。
しかし、一概にデジタル化と言ってもバリューチェーンの中で対象が変わってくる。例えば、企画や試作では人が「型」を作り、製造では機械が「製品」を作る。同じ製造工場でも、階層レベル(レイヤー)の違う現場では規格も異なる。
例えば、オフィスはITネットワークだが、製造部門はOTネットワークだ。さらに、工程の違いやセンサーやロボットなどを制御するフィールド機器の違いによって、多接続性や低遅延性、高信頼性などのネットワーク要件も異なる。
そのためデジタル化を議論する場合には、バリューチェーンを横軸に、階層レベルを縦軸にした平面のどの交差点に立っているのか、相手と一致させる必要がある。
ところで、RAMI4.0はどうして立方体なのだろうか。そして、レイヤーとは何か。次回詳しく解説したい。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉