2021.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】東芝デジタルソリューションズ 島田太郎社長〈東芝執行役上席常務〉
島田 社長
現存しないデータビジネス具体化
新型コロナウイルス禍からの経済の回復は業種によってまだら模様だが、回復基調の手応えを得ている。中でも公共や金融を中心に好調だ。経営体質の強化が奏功し、利益率は順調に上向いている。
事業別では、システムインテグレーション(SI)以外が進捗(しんちょく)し、クラウドサービスの勢いが増している。複数のクラウドをまとめて提供する「マルチクラウド」のサービスが、幅広い業種で伸びている状況だ。
東芝グループのインフラサービスを推進し、データサービスの中核的な使命を果たすため、東芝デジタルソリューションズ(TDSL)グループ傘下の子会社を再編する。SI事業と産業機器などにソフトウエアを組み込む事業について、10月1日付でそれぞれ一つの会社に統合する予定だ。分散していた各事業の資源や開発費を集約することで競争力を高めたい。
ベンチマークはSIベンダーではない。ソリューションをライセンスやメンテナンスベースで売る形に移行し、「ビジネスを行う先をずらす」戦略を展開する。現状の顧客以外から価値を創造することにも力を入れていきたい。
例えば、IoTや人工知能(AI)などのデジタル技術を駆使して製造業の生産効率向上を後押しするソリューション「Meister(マイスター)シリーズ」の強化に取り組むほか、サプライチェーン(供給網)マネジメントなどを注力領域と位置付けている。
そうした事業で収集したデータを別の事業に生かしてビジネス化する「PoC(概念実証)」にも注力する。短期的にはソリューションを拡充し、中長期的には現存しないタイプのデータビジネスの具体化を目指す。
東芝が4月に分割した次世代の暗号技術「量子暗号通信」の事業を、TDSLが引き継いだ。この分野で先行する強みを生かし、セキュリティービジネスを強化する。量子暗号通信では光の粒子(光子)に暗号化や解読に使う「鍵」の情報を載せ、光ファイバー経由で伝送する。鍵配信のサービス化にも力を注いでいく。