2021.09.24 「裏からも見える」透明ディスプレー魔法使い・落合陽一さん協力 会話テキスト表示で難聴者にも朗報

「レルクリア」の設置イメージ(提供=JDI)

 ほとんど透明で、ディスプレーの裏からも表示が見られる。会話内容がテキストで表示され、外国語も翻訳できる。そんなディスプレーを、落合陽一さんの協力を得て、ジャパンディスプレイ(JDI)が開発した。これを使えば、プレゼンのとき、画面と相手の表情の間で視線をせわしなく往復させなくてもOK。資料をディスプレーに映しながら、その先にいる相手と対話できる。聴覚に障がいのある人とも視線を交わし合いながら「対話」でき、コミュニケーション支援に役立つ品になりそうだ。難聴者の家庭などにもいち早く届けようというクラウドファンディング計画とともに24日、発表された。

 開発したのは「Rælclear(レルクリア)」。バックライト部分がなく、ほとんど透明。画素が全方向に向けて発光するため、どの角度からも視聴しやすい。

 筑波大学准教授の落合陽一さんらのグループと共同で開発しており、文字起こしを表示するシステムと連携している。マイクから入力された音声がテキスト化され、レルクリアに表示されるもの。ディスプレーは透明なので、表情を見ながら、文字化された会話内容が読める(反対側からは裏返しの文字になる)。「See-Through Captions(シー・スルー・キャプションズ)」と名付けられている。

 開発の契機になったのは、ユーザーのニーズ。「商談などでモニターを使うとき、画面にばかりに目が行き、相手の表情が分からない」「端末を使った授業などのとき、子どもの反応がつかみづらい」「通訳アプリで会話がスムーズにいかない」といった声がある。

 中でも、「ろう・難聴や高齢の方とのコミュニケーションが、端末や筆記ボードでは難しい」といった声は、コロナ禍で一層深刻に。マスク姿の相手の読唇ができない、といった課題があるためだ。画面などと相手の顔の間で視線が行ったり来たりすると、リアルタイムで反応を見ることもできない。

 今回の製品は、開発チームが2年ほど前から取り組む中で、落合さんとの接点ができ、完成にこぎ着けた。約2キログラム、344ミリメートル(横)×293ミリメートル(高さ)でA4ほどの大きさ。実用だけではなく、インテリアなどとしても使えそう。プレゼンでも、相手の反応を見つつ臨機に発表を変える、といったこともできそうだ。

 JDIは、ろう者・難聴者や高齢の方々、その家族へ少しでも早く届けたいと、応援購入サービス「Makuake」でクラウドファンディングを始めた。11月24日までに390万円を目指す。支援者には、リターンとしてレルクリアを届ける。なお、通常価格は16万2500円、クラファンの応援購入は13万円(ともに税込み)。

 実機は、東京・有楽町の「b8ta Tokyo-Yurakucho」(電気ビル1階)で、12月末まで期間限定で展示される予定。

 「当社としては、消費者向け製品を直接手掛けるのは初めて。社会課題解決にもつながれば」とJDI。「落合さんがメディアアーティストの活動の中で、表現にも使ってくれるかも」とも期待する。落合さんの「魔法」で活躍する日も近いかもしれない。
(詳細は28日付電波新聞・電波新聞デジタルに掲載予定です。)