2021.09.29 【ASEAN特集】車載・産機向け展開強化日系電子部品メーカー・商社

 日系電子部品メーカーや商社のASEAN地域現地法人は、成長が続く現地の自動車・産業機器市場に照準を合わせた展開を強化している。各社は、非民生系の高付加価値分野向けの生産・販売比率を高めることで、事業の付加価値向上を目指している。

 日系電子部品メーカーのASEAN工場は、かつては日系AV機器を中心とした民生機器向けの生産が高いウエートを占めていたが、近年はASEANの需要構造変化に伴い、大きく生産品目が変化している。

 特にここ数年は、日系や欧米系などの外資系自動車メーカーやティア1のASEAN投資が増大し、タイやマレーシア、インドネシアなどでは車載用部品需要が増大しているため、日系部品工場でも、車載用部品を軸とした生産増強を進めている企業が多い。各社は、自動車業界が求める厳しい品質要求に応えるため、生産ラインの高度化に取り組み、高品質な生産活動に磨きをかけている。自動車業界の品質基準である「IATF16949」などの認証活動にも力が注がれている。

 自動車産業のASEAN生産増強に伴い、生産設備機器メーカーのASEAN投資も増加しているため、これらの設備向け部品の現地調達ニーズに照準を合わせた取り組みも加速している。

半導体産業集積化

 ASEANでは、半導体産業の集積化も進んでいる。特にマレーシア北部のペナン地域などでは、欧米系をはじめとする主要半導体メーカーが数多く工場展開し、半導体の一大市場を形成している。このため、日系電子部品メーカーのASEANでの半導体プロセス用部品増産に向けた追加投資などの動きも活発化している。

 ASEANでは、四輪車に加え、二輪車(オートバイ)も重要アプリケーションの一つに掲げられる。最近は二輪車も高機能化や電装化が顕著。生産・販売両面で世界の二輪車市場で高いウエートを占めるASEANは、重要視される。

 このほか、現地の電力インフラ需要増大などに対応した、パワー系電子部品の生産体制増強や生産品目拡大にも力が注がれる。民生系では、AV機器向け部品の生産比率が低下する一方で、エアコンなどの白物家電/住設機器向け部品の生産は、引き続き重視されている。スマートフォンやノートパソコン(PC)、タブレット向け電子部品の自動機生産増強にもウエートが置かれる。

 日系エレクトロニクス商社では、ASEANでの工場自動化・省力化ニーズの高まりに対応し、現地でのFA・自動化ソリューションの提案強化に努めている。現地の工場の生産ラインで使用される電機品販売に加え、工場の生産管理の見える化や生産自動化に向けた提案を強化のため、現地のエンジニアリング能力の向上に力が注がれている。

顧客満足度を向上

 最近は、完成品メーカーや産業機器メーカーなどが日本や中国からASEANへの生産移管を行う際に、コロナによる移動制限でエンジニアの出張対応が難しくなっている。そのため、日系電子部品商社は、現地のエンジニアリング機能を活用し、顧客の生産移管のサポートを行うことで、顧客満足度の向上に努めている。

 企業によってはASEAN主要国に、各種生産設備や外観検査装置などの実機展示を行う「テクニカルショールーム」などを開設しているケースもある。

 ASEAN市場では、2018年から20年にかけて、米中貿易摩擦激化やコロナ禍の影響により設備投資需要がやや停滞したが、工場の自動化・省力化に関わる需要は、今後も中長期で安定的な拡大が見込まれる。各社は専門商社としての強みを生かしながら付加価値の高い提案を進めることで、顧客満足度の向上を目指す。