2021.11.19 【はんだ総合特集】千住金属工業低温フローソルダリング

低温やに入りはんだLEO-L20

新工法と関連製品を提案、脱炭素化に貢献へ

 千住金属工業は、はんだ事業の観点から関心が高まるカーボンニュートラル実現に貢献するため低温はんだの優位性に着目し、低温はんだに対応したフローソルダリング(DIP方式)の製造工法やはんだ槽、はんだ製品を開発した。

 同社は用途に合わせたはんだ製品を豊富にそろえ、低温はんだについてもSn(スズ)-Bi(ビスマス)系の「L20」(融点139度)やSn-Bi-Sb(アンチモン)-Ni(ニッケル)系の「L29」(同140度)を既に市場に投入している。

 一般的にはんだはBi、In(インジウム)、Cd(カドミウム)などが含有されることで融点が183度未満に下がる。Sn-Bi系低温はんだはフローソルダリングで使用するとドロス(はんだ槽の表面に浮くはんだの酸化物で、プリント基板のはんだ不良の原因になる)が多く発生する。その結果、基板に多くのドロスが付着するため、実装された基板の信頼性が確保できなかった。

 これは通常のフローソルダリングのプロセスでは克服できない課題で、フローソルダリングに低温はんだを用いることが難しかった一因でもあった。また、Sn-Bi合金は延性が低いため、フローソルダリングに不可欠な修正用やに入りはんだの量産が難しかった。

 同社は、こうした低温はんだのフローソルダリングにおける課題解決に取り組んだ。まず、ドロスの発生を低減させ、基板に付着するドロス量を少なくさせる噴流ノズルの開発に成功した。はんだの噴流を工夫することで、酸素の巻き込みによるドロスを減少させる。

 実装基板へのドロス付着のリスクも低減させることで、従来(SAC305)以上のはんだ付け性能を確保することが可能になった。その際のフラックスは、これまでのスズ・銀・銅系合金で使用してきた従来のフラックスで対応できる上に、低温フローソルダリング専用フラックス(ハロゲンフリー樹脂系フラックス)も用意する。

 大量に発生するドロスを、フロー装置内で再利用する技術も開発した。低温はんだは、SAC305に比べてドロス発生量が多く、従来ははんだ槽内にたまったドロスを1時間に1度程度、回収する必要があった。これは時間がかかるだけでなく、大量のはんだを廃棄することにもつながる。同社の開発した低温フローソルダリング工法は、生産を止めることなく、はんだ槽内部でドロスをはんだに再利用することができ、コストも抑えられる。

 修正用の低温やに入りはんだ0.6~2.0ミリメートルの量産にもめどをつけた。これらを、より顧客の製造コストを意識した一般的なフローソルダリング技術として、自動はんだ付け装置から材料である低温棒はんだとフラックス、低温やに入りはんだをモノづくり現場に提供する体制を整えた。