2022.01.10 多様な業種からデジタル投資呼び込む政府がロードマップの策定方針表明、デジタルで日本を一斉改造

 政府は、日本全体のデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)を進めるため、「デジタル日本改造ロードマップ」を策定する方針を打ち出した。2030年前後以降を視野に、デジタルインフラとエネルギーや交通・物流を支えるインフラなどを一体的に整備する工程表をまとめる。

 経済産業省が6日に開いた産業構造審議会(経産相の諮問機関)の経済産業政策新機軸部会で、ロードマップを策定する方針を表明した。今春以降にも工程表を具体化させ、デジタル技術で地域の活性化を目指す政府の「デジタル田園都市国家構想実現会議」(議長・岸田文雄首相)に示す。官民のデジタル投資を大胆に増やす呼び水にしたい考えだ。

 部会で示した工程表のイメージによると、技術の進展を踏まえて描く22年以降の道筋だ。25年以降には、データセンター(DC)の一極集中を是正して地域に広げるほか、クラウドサービスの拡大やデータ連携基盤の整備などを推進。第5世代移動通信規格5Gの次の世代「ポスト5G」の実現や国内海底ケーブル網の拡大を狙うほか、多数の人工衛星を協調させる「衛星コンステレーション」にも注目する。30年前後以降の施策としては、次世代の通信規格「ビヨンド5G」などを位置付ける。

 さらに、デジタル社会を支える周辺技術「MEC(マルチアクセス・エッジ・コンピューティング)」にも着目。ユーザーに近いエッジ側にサーバーを設置してデータ処理を行う技術で、30年前後以降に本格化させる。

 多様で大量の機密情報をネットワークを通じてやりとりする時代が到来する中、情報保護に対する社会的な要請が強まっている。それに応える次世代暗号技術「量子暗号通信」にも焦点を当て、25年度以降に同技術の活用を促進。30年前後以降には、複雑な計算問題を得意とする技術「量子コンピューティング」の実装を促す。

 温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向け、再生可能エネルギーの拡大などの施策も総動員。再エネの普及に伴い重要度が増す電力需給の調整に関する技術も重視。電気自動車(EV)の蓄電機能を電力網の運用に役立てる「V2G(ビークル・ツー・グリッド)」や、電力の需給バランスを需要側で調整する「デマンドレスポンス」などを工程表に盛り込む。

 日本のDXを巡っては、局所や個別の対応では限界があるのが実情だ。経産省は経済成長のドライバーであるデジタル投資の遅れが日本経済の「失われた30年」の大きな原因と問題視した上で、「デジタル日本改造ともいうべき全国一斉の大改革が必要」と強調。これにより、デジタル田園都市を実現し、同様に国土の大改革による経済成長を目指した50年前の日本列島改造論で超えられなかった「距離の壁」も克服したい考えだ。

 岸田首相は年頭の記者会見でデジタル田園都市国家構想の実現に言及し、地方での官民のデジタル投資を大胆に増加させる「デジタル投資倍増」に取り組むと表明した。

 ロードマップづくりでは、エネルギーインフラから自動運転や自動配送といった交通・物流インフラのデジタル化にまで視野を広げる方針だ。将来を見据えた統合計画を示すこで、多様な業種から大型のデジタル投資を呼び込むとともに、付加価値を生み出すビジネス変革を実現する「本物のDX」も喚起したい考えだ。