2022.01.11 【ICT展望2022】三菱電機 織戸 浩一 専務執行役(インフォメーションシステム事業推進本部長)

三菱電機の織戸専務

ICT事業 成長にかじ切る

データ利活用のヘルスケア領域、ビジネスとして本格化

 ―2021年、22年のICTの市場環境についてはどう見ていますか。

戻りつつある市況

 織戸専務 21年は、コロナの緊急事態宣言の長期化で、設備投資を控えたお客さまも多かった。例えば酒販や交通関係などだ。また、半導体の不足でサーバー、ネットワーク機器が入手できず、工場の生産断念や先延ばしなどが目立った。一方、製造業を中心にDX化、デジタル化はかなり進展した。市況はコロナ前に戻りつつある。

 22年は、コロナ感染の再拡大の懸念など不透明なところはあるが、堅調に推移すると見ている。「2025の崖」でも指摘されているが、レトロシステムの更新需要、DX化も本格化する。働き方は、オフィスと在宅のハイブリッド型が定着する。ハイブリッドクラウドへの切り替え、セキュリティー面からのゼロトラスト技術の導入など本格化が期待される。

 こうした中、ITグループ子会社を含めた当社のICT事業は、売り上げ規模では、コロナ禍の影響を受けたものの、収益性が伸びている。22年度は売り上げ規模と収益面で21年度を上回る計画で臨む。グループ全体は、毎年、収益性を伸ばしてきた。22年度は成長にかじを切る。

 ―20年度にITグループ3社を再編、各社の得意領域に特化した体制に移行しました。今後のグループ連携強化のポイントは。

 織戸専務 SAP S/4 HANAによる3社の統合システムを23年10月に稼働させる。これまでの各社独自のシステムを統合、データ連携できることで、業務効率の向上や投資の最適化、さらにグループの一体感も出てくる。また、SAP HANAは27年にサポート切れを迎える。今後、SAP S/4 HANAへの移行ビジネスが本格化するが、当社の事例を移行ビジネスに反映できる。

 ―22年度の重点事業について伺いたい。御社が強みを持つ金融分野ではどう取り組まれますか。

クラウド移行に力

 織戸専務 金融分野は、お客さまのシステムのクラウド移行に注力する。昨年11月に、グループ会社の三菱電機インフォメーションシステムズが、技術力などに定評がある独立系クラウドインテグレーターのスカイアーチネットワークスと協業を発表した。導入コンサルティングから設計・構築、運用・保守まで、トータルで金融業界のクラウド化を進めていく。

 ―製造業は、ERP、MES、PLMなどに注力されています。

 織戸専務 SAP S/4 HANAへの移行ビジネスを本格展開していく。工場管理のMESや、設計領域から製造、保守まで製品情報を一元管理するPLMによる全体最適化などに引き続き注力するが、今後特に注力していくのがOT(制御・運用技術)領域のセキュリティー対策だ。当社22工場のうち、複数工場で実証済みだが、22年度からはコンサルから設計や導入、運用、さらに問題が発生した時の対応までの循環型ビジネスとして、外販に力を入れる。

 ―データの利活用が重要になってきています。

 織戸専務 データを利活用したヘルスケア領域に力を入れている。ヘルスケア分野は、さまざまなところにデータがあるが、こうしたデータを連携させた企業の中のデータの利活用を進め、健康な人がより健康になることを目指している。22年度は、ビジネスとして本格化させる。

 また、環境面ではサプライチェーンを含めた環境対策が求められている。データを活用したカーボンニュートラルソリューションをクラウドサービスで、中堅中小企業向けにも提供していく。