2022.01.19 日系FA・製造装置系企業が工場進出などインド投資活発政府がEVや半導体産業後押し

インドを世界の研究開発・製造業のハブに―。産業振興政策「メイク・イン・インディア」を推進するモディ首相(右、モディ首相のツイッターから)

 世界の製造業が、「メイク・イン・インディア」政策を掲げて国内製造業の振興を図っているインドに大きな関心を寄せる中、日系FA・製造装置系企業も工場進出など投資に乗りだした。世界の主要製造業も同様の動きにあり、「世界の工場」が中国からインドへと移り変わる兆しをうかがわせる。

 インドの総人口は現在約13億人で中国の14億人に次いで世界2位だが、国連の資料によると、この先も増え続けて2027年には中国を超えると予測されている。

 中国は今後、超高齢社会に入るが、インドは若年層の割合が多いため生産年齢人口比率(15歳以上65歳未満の割合)も高い。

 インドでは今年、第5世代移動通信規格5Gが国内13都市で始まることから、バルティ・エアテルなど国内主要通信事業者はこれら地域に5G基地を設置している。南アジアのEV(電気自動車)大国を目指し、EV産業の底上げを図るため、インド政府は向こう5年間で2600億ルピー(約4000億円)を投じると報じられている。米テスラのインドへの工場進出も決まっている。

 半導体産業の誘致にも積極的で、政府は21年12月、応用化学電池や自動車・同部品、通信ネットワーク製品など関連分野も含めた半導体を中心とする電子産業の振興を図るため、総額2兆3000億ルピー(約3兆4500億円)を投じると発表した。

 こうしたモディ政権の、インドを世界の研究開発・製造業のハブにすることを目標とする産業振興政策メイク・イン・インディアに製造業が高い関心を寄せ、日系FA・製造設備企業も工場進出など投資を加速している。

インド国内に6拠点

 FA系では、三菱電機はインド国内に「FAセンター」6拠点を置いているが、プネ市タレガオンに新生産拠点を設ける計画で、23年度の竣工を予定。インバーターを生産し、グローバル生産拠点として拡大する。

 富士電機はFA業界に先駆けてインドへの投資を進め、09年に販売会社の富士電機インド社(FEI社)を創業、16年に低圧インバーター工場を設置した。19年にはインドの大手電源装置メーカーのM&Aにより富士電機コンスルネオワット社(FCN社)をスタートしている。

 直動機器・軸受メーカーでは、日本精工がインド・ラネー社との合弁会社ラネーNSKステアリングシステムズ(タミルナドゥ州チェンナイ)を通じて、インド北西部のグジャラート州アーメダバード市に電動パワーステアリングシステム(EPS)工場を19年に設立し、稼働している。

EPSを生産する日本精工インド工場

 THKは直動機器「LMガイド」を生産するため、アンドラプラデーシュ州スリシティに土地面積20万5000平方メートル、第1期床面積3万7000平方メートルの工場を新設し21年秋に竣工、稼働した。当面はASEANや欧米など海外向けを生産。インドの需要が増大すれば9割を国内向けとする。インド工場を主力工場に拡大していく。

21年秋から稼働したTHKインド工場

 実装系ではFUJIが子会社「FUJI INDIA」(ハリヤナ州グルグラム市)を設立し、20年3月に営業を開始した。基板実装のEMS事業を展開するカトーレックは、現地企業と合弁で18年にプネーに製造会社を設けた。レクザムもEMS事業において、インドのディクソン社と合弁事業による生産活動を22年からスタート。同社はEMS事業の7割を中国で占めてきたが、今後はタイとインド両工場をグローバル生産拠点として拡大する。

 エレクトロニクス商社もインド投資を始めている。佐鳥電機は、モビリティー向け半導体製品の販売事業を強化するため、電子部品卸商社で二輪メーカーをはじめ多くの企業を顧客に抱え、インド全土に販売網を持つSMエレクトロニクス(カルナータカ州ベンガルール)に出資し、22年から協業を始める。