2022.02.01 【コネクター特集】コネクターメーカー、安定供給体制を確保へ調達力強化や代替品提案で サプライチェーン維持・拡大

 コネクターメーカー各社は、昨今の材料不足の長期化や物流逼迫(ひっぱく)などによるサプライチェーンの混乱が続く中で、顧客への安定供給体制確保への取り組みに全力を挙げている。各社は、旺盛な需要に対応するための生産設備増強を進めるとともに、部材調達の強化や代替品の提案などにも力を注ぐことで、グローバルサプライチェーンの維持・拡大に努める。

材料価格が上昇

 最近のコネクター市場では、旺盛な需要が継続する一方で、コネクターに使用される高機能樹脂や金属材料などの入手難が深刻化し、材料価格の上昇も顕著となっている。

 特に成形工程などに必要な樹脂材料は、ナイロン(ポリアミド)系樹脂や液晶ポリマー(LCP)などのスーパーエンプラの供給不足が深刻化している。

 ナイロン系樹脂の需給逼迫の背景には、ICT機器や自動車関連をはじめとする急速な需要増の影響に加えて、2021年2月に米国で発生した大寒波の余波で、化学メーカーの工場が集中するテキサス州で長期間の停電が発生したことが大きく影響している。

 この停電により、ナイロン系樹脂の原料であるアジポニトリル(ADN)およびADNから生成されるヘキサメチレンジアミン(HMDA)メーカーの製品が供給不足に陥り、HMDAを使用する「PA66(66ナイロン)」や「PA6T(6Tナイロン)」などの樹脂の生産が影響を受けたことが、コネクターメーカーの調達にも大きな影響を与えており、直近でもHMDA不足状況が継続している。

 このため、コネクターメーカーでは、サプライヤーとの連携によるグローバル調達力の強化を図るとともに、HMDA使用ナイロン樹脂から、HMDA不使用のナイロン樹脂への代替、さらにLCPといった非ナイロン系スーパーエンプラへの代替提案などに力を入れている。しかしながら、最近はこれらの非HMDA系樹脂に関しても需給が逼迫し、入手難の状況が顕著となっている。

 金属材料に関しても旺盛な需要を背景に、さまざまな金属材料の需給が逼迫しており、特にコネクターに多用されるリン青銅の供給不足が深刻化している。

航空便も増加傾向

 さらに、グローバルでの物流逼迫状況も続いているため、各社は、顧客への安定供給体制確保のための取り組みに全力を挙げている。納期順守のため、平常時よりもエア便(航空便)輸送のウエートを増やしている企業も多い。

 また、半導体不足や原材料不足は、コネクター各社の供給先メーカーの生産にも影響を与えているため、各社は顧客の生産計画などを迅速に収集するべく、顧客との情報交換の強化に努めている。

 同時に、コネクター各社は旺盛な需要に対応するため、国内外での生産設備増強も活発化させている。20年から21年にかけては、コロナ禍に伴う不要不急の投資抑制の動きも一部見られたが、22年は多くの企業で新工場建設や新工場棟増設などが国内外で計画されている。最近は設備のリードタイム(L/T)も長期化する傾向にあるため、設備の先行手配も重視されている。

 加えて、試験・評価体制の強化・拡充や工場のスマートファクトリー化のための投資などにも力が注がれる。金属価格が高騰する中で、めっき工程における省金めっき技術の追求なども重視されている。

 20年から21年にかけては、多くのコネクターメーカーがASEAN地区工場で現地政府のロックダウン措置の影響を受けた。特に21年夏場以降は、ASEAN工場の稼働率低下を補うため中国や日本などの工場での挽回生産に取り組んだ。これらの経験を踏まえ、グローバルサプライチェーンの再構築や国内外の複数工場でのマルチ生産体制強化に取り組むコネクターメーカーも増加している。

 各社は、生産・調達・物流などのあらゆる面でのオペレーションの充実化を図ることで、顧客に対する万全なコネクター供給体制の確保を目指す。