2022.03.02 【コンデンサー特集】神栄フィルムコンデンサー
新規開発の大容量ポリプロピレンフィルムコンデンサー
神栄は、子会社の神栄キャパシタ(神戸市中央区)において成長市場の車載、産業機器向けに注力し、フィルムコンデンサー事業を拡大していく。
需要に応える生産体制、新規分野の深耕を目指す
昨年7月、基幹工場である神栄キャパシタ長野工場(長野県東御市)は、自動車産業品質マネジメントシステムの国際規格「IATF16949‥2016」認証を取得した。電源回路用フィルムコンデンサーで培った技術、製造ノウハウを生かし、電装化が進んで小型化、高性能化、高耐熱性、耐振動性が求められる車載向け需要に対応できる体制を整えた。
市場が急拡大するEV・PHVなど環境対応車の給電ステーション向け、充電器オンボードチャージャー向け、DC-DCコンバーター用、車載用のエアコン、音響機器用途などのフィルムコンデンサーの開発を加速。環境対応車と家庭をつなぐV2Hシステム向けや蓄電池システム向けの需要への対応も開始し、車載向けの生産、供給に本格的に取り組む。
また、日系やアジア系自動車メーカーで求められる車載用機器の信頼性国際試験規格AEC-Q200に対応した製品ラインアップの拡充、モノづくりを顧客ごとに進める。映像、照明、音響、電源、調理家電といった民生機器向けに高耐圧用フィルムコンデンサーを生産しているマレーシア工場(ジョホールバル)でも製造設備能力を生かし、増大する車載用フィルムコンデンサーの供給拠点としての体制を整えていく計画だ。
産業機器向けについても、ロボットや製造設備・受電設備のインバーター用、サーボモーター用太陽光発電システム用、パワーコンディショナー向けの需要に積極的に対応。長野工場とともに、コスト競争力のあるマレーシア工場からの供給に力を入れる。
旺盛なフィルムコンデンサー需要に応え、長野工場、マレーシア工場ともにフル生産を続けている。自動化、省人化にも取り組み、長野工場では素子の巻き取り工程に画像センサーを取り付け、素子工程を見える化。少量多品種、特殊品のさらなる生産性の向上、品質向上を図る。
中期3カ年経営計画「神栄チャレンジプロジェクト2023」の初年度となる21年度もコンデンサー、センサー、計測・試験機器の電子関連事業が業績をけん引している。コンデンサーは、新型コロナ感染症拡大の影響でマレーシア工場が一時期ロックダウンにより操業制限を受けたものの、長野工場で生産をカバー。他社で供給できない生産も引き受けるなど、積極的な供給体制で臨み、顧客の安定生産に貢献した。現在も納期順守の供給体制を維持し、旺盛なフィルムコンデンサー需要に応えている。
23年度に各セグメント利益を合計した総額の20%を電子関連で占めるという計画に対し、21年度第3四半期には20%を上回る実績を上げ、21年度通期も20%超を見込む。食品関連、物資関連、繊維関連、電子関連でバランスの取れた事業ポートフォリオを構築。コンデンサーは新規分野の深耕で収益の安定化を目指す。