2019.12.18 新電力ベンチャー みんな電力、個人向けトラッキングサービス来年度中にも開始

三宅成也・専務取締役事業本部長

 ブロックチェーンと再生可能エネルギーを結び付けた技術で注目される新電力ベンチャー、みんな電力(東京・世田谷)の三宅成也・専務取締役事業本部長が、電波新聞の取材に応じ、経営の現状や今後の方針について語った。

 どこの発電所の電気を購入したかが分かるトラッキングのサービスを早ければ来年度中にも、現行の法人対象から個人向けに拡大させる方向で準備していることを明らかにした。主なやりとりは次の通り。

 ―環境意識が高い消費者は再エネを望みます。今後の展開は。

 三宅専務 今、法人の契約件数は2000~3000件にまで増えている。トラッキングサービスは、使用料として月1万円程度かかる。個人向けでは、まだ高額でもあり、法人に限っている。

 だが、新たなプラットフォームを開発して、個人向けにも展開していく。プラットフォームは、ほぼできている。今年度中には開発を終え、早ければ来年度からサービスを始めたいと考えている。

 -個人から引き合いも強まる中、電気を十分に確保できますか。

 三宅専務 最近、個人からの問い合わせが増加傾向だ。現在、個人契約は約2000件。まだ決して多くはないが、取り組みに共感する著名人がPRしてくれる影響で、口コミで広がっている。

 電気は、全国の200~300カ所のソーラー発電所などから仕入れている。FIT(固定価格買い取り制度)と、そうでないものとが混じっているが、約50万kW集まっている。もちろん基本、再エネ100%だ。売る分の5~10倍を仕入れることができているので、電気は余り市場に放出している状態だ。

 契約者はネット上で、仕入れ先の発電する生産者から選んで、電気代のうち月100円支払って支援できるサービスもある。消費者に生産者との「つながり」を感じてもらう仕組みだ。

 -国は現行のFITから、市場での売買価格に上乗せ金で支援するFIP制度へ移行する方針です。

 三宅専務 非常に大きな変化だ。電力会社が買い取る保証がなくなる。発電分は、どこかに売って、国は上乗せ金を出してくれるだけになる。発電事業者は、買い手を探さなくてはならない。これまでは「権利を取る」という発想だけだった。事業者は環境が大きく変わり、淘汰されるかもしれない。弊社には、そういった事業者を引き寄せることができる仕組みがある。事業者と需要家をつなぐという役割で、大きなチャンスでもあると思っている。

 -電力業界への思いを。

 三宅専務 大学院まで電気工学を学び、関西電力で07年まで原子力技術者だった。37歳で退職、いったんは電力業界から離れて外資系コンサルタント会社に勤めた。

 客観的に電力業界を眺めることができたいい経験で、確信めいたものにもたどりついた。このままいくと、電力は価格競争に陥り、電力自由化も近々終わるだろうと。

 安売りすれば、契約の伸びも早くなるかもしれない。だた、価格競争で疲弊しても仕方ない。再エネにこだわるのが私たちのやり方。技術を抱え込むだけでなく、広げなければとも思っている。ただ、発電所と需要家をつないで集めるということは、一つのコミュニティーを立ち上げるのと同じで、難しさがある。単に安さに集まった需要家たちではないのだから。